ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
宝石のような時間/その3
アキラ



チャイムを鳴らすと、玄関を開けてケイコちゃんが出てきた

「アキラ、待ってたよ。早く入って」

オレは手を引っ張られ、そそくさと部屋の中へ…

でも、ケイコちゃんは顔色もさえず、体調が悪そうだ

もしかして、”副作用”の影響とかだろうか…

オレは外食の話、言い出せなかった

また今度にすればいい

それより、一緒の時間は大切にしないと

「せっかく会えたのに、シャキッとできなくてゴメンね」

だるそうなケイコちゃんは、すぐに座り込んだ

オレがとなりに腰を下ろすと、肩に半身もたれてきた

「そういえばさ、海で一緒だった友達から連絡ってあった?」

「いや、海以来ないよ。まあ、留守中はわからないけど」

ケイコちゃんは、オレの顔を覗き込んで言った

「今度、みんなで豊島園に行くんだって。それで、アキラが来れば行くって子がいてさ。お友達、アキラ誘っとくって言ってたらしいんだけど」

「いつものことだよ、連絡なんかしてこないよ」

さらりと受け流したら、ケイコちゃん、真っ赤な顔してる

「アキラって、なんでそうなの、いつも」

怒ってるっていうよりも、なんか、悲しそうな感じでイラついてるようだ

「あ、ごめん。今日、私、少し変だから…。別にいいよね、そんなこと…」

そう言うと、今度はオレの両膝に顔を持ってきた

ああ、膝枕ってやつか…

...


「麻衣って子と、真正面からぶつかりあってるケイコちゃんからすれば、歯がゆいんだよな」

「アキラは大人なんだよ。だけどさ、世の中、ずるい人いっぱいいるし…、付け込んできてるんだったら、それに反発しないと…、だってそうしないと…」

やっぱり、具合悪そうだ、いつものテンポと違う

「まあいいや。なんだかんだ言っても、そんなとこ含めて丸ごとでアキラが好きなんだし…。なんか、このまま寝ちゃいたい。少しこうして眠ってもいい?」

オレは「ああ」とだけ言った

この子が言ってることはもっともだ、素直に思うよ

的を得てるし、どこか深いんだよな、この子の考えることは

それに、赤子さんからも似たようなこと言われたことがある

肝に銘じないとな…

ただでさえ、オレたちの前にある障害は生半可じゃないんだ

...


しばらくすると、穏やかな寝息が漏れてきた

オレの膝の上で、束の間の休息ってところか

寝顔、やけに子供っぽいや

夢みてるのかな?どんな夢かな…








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