ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
盛夏の傷跡/その13
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その日の午後、滝が丘高校に出向いたケイコは、陸上部顧問の志田先生に会い、休部の返上を申し入れた。
顧問からは、その場で即、了解がもらえた。
あっけない復帰の許可に、ケイコは戸惑いがちに言った。
「あのう、先生。一応、主将と主だった部員には話をしてもらってからで…」
顧問は思わずハハハと声を上げ、ケイコに答えた。
「主将の桑原がさ、みんなの同意を取りまとめとめてあるんだ。横田が戻ってくると言ってきた時、すぐ対応できるようにね、」
ケイコは良きライバルでもある、同級の主将、桑原里美子に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
”ありがとう、リミ。そしてゴメン…”
ここまでみんなに気遣ってもらってるのか、私…。
今までの休部の経緯や、今の自分が抱えている”諸事情”を考えるに付け、ケイコは心を痛めた。
...
職員室を出る間際、志田先生は、ケイコの母が何度かケイコのことで相談に来たことを伝えた。
高校に入ってから、交友関係が乱れていると…、心配だと。
志田先生は、「競子さんは、しっかりしてる。滝が丘でピカ一の生徒ですよ。心配いりませんよ」という対応をしたと、ケイコに微笑しながら告げた。
ただその後、ちょっと間をおいて、「横田は奔放だからな…。まあ、いくら我々が太鼓判を押す生徒でも、親御さんからすれば、気が気じゃない。ハラハラするのは当然だ。少しでいいから、自重しろよ。オレは信頼してるけどさ、お前のことはな」
先生はおそらく、なにも知らない。でも、何か感ずるところはあったんだろうと、ケイコは咄嗟に考えた。
私のこと、信じてくれてるから、”この程度の言葉”で留まるのだろうと。
”先生、ゴメン。いずれ私のこと失望する…”
ケイコはまた心の中で謝っていた。
”ここんとこの自分、謝ってばかりだ。心ん中で…”
これはケイコの偽ざる実感であった。
...
ケイコは校庭のど真ん中に立っていた。
今日は屋外の部活動はなく、この瞬間、校庭にはケイコ一人だった。
この時、ケイコは必死に、自分に問いただしていた。
たしかに自分は、周りから好意的に評価されるのに慣れ過ぎてしまったと、ケイコは今さらながら気づいた。
周囲からの訓戒などは無縁で、それが小さい頃からずっと続いてきたのだ。
だから、奔放な性格の自分が”一線”を越えることも、安易にできてしまったのかも知れない。
その結果は必然で、今日、今現在の自分ではないかと…。
ケイコは炎天下のグランドに佇み、ここで無心にハードルを越えていた自分を思い返していた。
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その日の午後、滝が丘高校に出向いたケイコは、陸上部顧問の志田先生に会い、休部の返上を申し入れた。
顧問からは、その場で即、了解がもらえた。
あっけない復帰の許可に、ケイコは戸惑いがちに言った。
「あのう、先生。一応、主将と主だった部員には話をしてもらってからで…」
顧問は思わずハハハと声を上げ、ケイコに答えた。
「主将の桑原がさ、みんなの同意を取りまとめとめてあるんだ。横田が戻ってくると言ってきた時、すぐ対応できるようにね、」
ケイコは良きライバルでもある、同級の主将、桑原里美子に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
”ありがとう、リミ。そしてゴメン…”
ここまでみんなに気遣ってもらってるのか、私…。
今までの休部の経緯や、今の自分が抱えている”諸事情”を考えるに付け、ケイコは心を痛めた。
...
職員室を出る間際、志田先生は、ケイコの母が何度かケイコのことで相談に来たことを伝えた。
高校に入ってから、交友関係が乱れていると…、心配だと。
志田先生は、「競子さんは、しっかりしてる。滝が丘でピカ一の生徒ですよ。心配いりませんよ」という対応をしたと、ケイコに微笑しながら告げた。
ただその後、ちょっと間をおいて、「横田は奔放だからな…。まあ、いくら我々が太鼓判を押す生徒でも、親御さんからすれば、気が気じゃない。ハラハラするのは当然だ。少しでいいから、自重しろよ。オレは信頼してるけどさ、お前のことはな」
先生はおそらく、なにも知らない。でも、何か感ずるところはあったんだろうと、ケイコは咄嗟に考えた。
私のこと、信じてくれてるから、”この程度の言葉”で留まるのだろうと。
”先生、ゴメン。いずれ私のこと失望する…”
ケイコはまた心の中で謝っていた。
”ここんとこの自分、謝ってばかりだ。心ん中で…”
これはケイコの偽ざる実感であった。
...
ケイコは校庭のど真ん中に立っていた。
今日は屋外の部活動はなく、この瞬間、校庭にはケイコ一人だった。
この時、ケイコは必死に、自分に問いただしていた。
たしかに自分は、周りから好意的に評価されるのに慣れ過ぎてしまったと、ケイコは今さらながら気づいた。
周囲からの訓戒などは無縁で、それが小さい頃からずっと続いてきたのだ。
だから、奔放な性格の自分が”一線”を越えることも、安易にできてしまったのかも知れない。
その結果は必然で、今日、今現在の自分ではないかと…。
ケイコは炎天下のグランドに佇み、ここで無心にハードルを越えていた自分を思い返していた。