ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
ダブルミーニング/その5
剣崎



麻衣の部屋でミーティングは久々だ

ヤツ、だいぶ顔色が悪いな

まだ、げっそりまではいってねえが…

「どうぞ、毒入りじゃないですから」

俺の目の前に、麦茶のグラスがそっと置かれた

いつもは見慣れてる妖しい薄笑いも、ここにきて正直、不気味だ

こいつ、どこを見据えてるんだ?

目的というものが、そもそもあるのか…


...



「麻衣、お前次第になってんだ、今。決定事項で聞かせてもらおうか。いつだ?」

「8月31日、夏休み最後の日。昼、行きますよ」

「よし、それで、矢島さんともセットする。変更はあり得ない、それでいいな?矢は2本もう飛んでるんだぞ。大丈夫だな?」

「いいですよ」

麻衣は表情一つ変えずにそう答えた

そして俺は、ここで麦茶を一口、口に運んでから言った

「…、麻衣、はっきり言う。疑念がでてる。お前、建田サイド洗って、現代リサーチってとこ、承知したな?電話したな?まず答えてくれや」

麻衣は顔色は悪いが、眼は爛々としてる

妙に不似合いでもあるが、マッチしてるようにも思える

「電話しましたよ、この部屋から。電話代払ってるの、相和会って知ってて。で、ほかに?」

「ああ、何を話した?」

「なにも…。通話時間、調べましたよね?”何時間”話してました?私…」

ヤツは、オウム返しでたたみ込むように問いかけてくる

俺も敢えてそれを承知で答えた

「…、44秒だった」

「そんなもんでしたね、あん時は…。無言電話ですよ」

「…」


...




「剣崎さん、どうしたんですか?もっと聞いてくださいよ。私の体調、”こんな状態”のうちに…」

今日は俺に”決心”させる腹のようだ…、こいつ

「俺たちに知れるはずの電話で、”そこ”に”無言発信”か…。訳、聞かせてくれ」

「フフ、剣崎さん、別にリークするつもりはないのよ。ただ、あなた達ものせたいのよ、手のひらに…、”私たち”の」

ダブルミーニング…、この野郎、確信犯だ

「相馬会長との共同作業って訳か?あの世にいる”あの人”との…」

麻衣は俺の目をまっすぐ見てる…

「そうですよ。で、まず、その質問は完結ですよね。あと、何ですかね?答えますよ、この際」

「ああ、聞こう。倉橋とは一線超えたのか?」

「はい。あの人の勲章にもう、メロメロですよ。すいません。剣崎さんの重要な見張り、張りぼてにしてしまいました…」

すんなりか…、普通は開き直りととれるが、麻衣は違う

「そう、はっきり明かしてくるとはな…。それも共同作業ってやらか?」

「そうですね。でも、どうにでもどうぞ、”そっち側”の解釈は。ただ、私にもいろいろ迷いとか、戸惑いはありますよ。それも加味して、よろしくってことです」

なるほどだ、ここにきてわかりやすかったぜ、麻衣…


...



「わかった…、とにかく31日だな。まずは、それだ。いいな?」

「大丈夫ですよ。私、他の矢と一緒に飛びますから…」

俺の”決心”はついた

麻衣のお望み通りだ、これでいくぞ、麻衣











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