ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
シナリオ&カラクリ/その9
アキラ


麻衣はオレの反応を、興味深そうに伺っている様子だ

この顔、いつもながら小憎らしい限りだ

とても女狐とか小悪魔とかのレベルじゃないよ、コイツ

「あなたって、固く考えるクセあるわね、どうもね。あなたに”ここまでのこと”をしてきた、私が、埋め合わせって言ってるのよ。素直になればいいのよ、難しく考えないでさ」

そう言うと、右手をさらに強く握った

そして、手を放すと、今度はオレの真正面に向きなおして、目をつぶった

「このあと時間押してるから、早く済ませて」

10秒くらい間をおいて、オレは右手で麻衣の顔を張った

結構、思いっきりのビンタだった…

思わず体を斜め後ろにそらした麻衣は、後ろ手をついた

そして、目を開けてこっちに向き直した

髪の毛の乱れも直さずに

別に表情は変えていない

そして麻衣は、また目をつぶった

今度は目の前にあった麦茶を、麻衣の顔にかけてやった

咄嗟だったが、いずれも素直な自分の気持ちに従った、”行為”だった

「終わりだよ、これで…」

オレは、目をつぶったままの麻衣に言った

「…。なかなか面白かったわ。じゃあ私、シャワー浴びてくるけど、まだ帰っちゃダメよ。それと、おけいとはそれ一回だけだから…」

麻衣は立ち上がった後、そう言って、顔にかかった麦茶を拭いもせず、浴室に向かった



...



考えてみれば、麻衣って子はいつもこんなだったかな

初めて会ったのは、火の玉川原のテントだった

ケイコちゃんとやりあってて、イス蹴りあげてた

そのあとオレに、部外者は出てけって怒鳴ってたわ

相手が誰であろうと、それまでどんなことがあろうと、いつもこうだ

相手の目、しっかりと見て、正面からぶつかってくる

まあ、何考えてるかわからないってのも、いつもなんだけど…

逆に、どこか分かり易い投げかけもしてくる

そういえば、アイツらに監禁されたあの夜も…

麻衣の言う事、やること、なぜだかオレの中にストーンと落ちていった

今思うと、そんな感じなんだ

”私は真正面からは逃げない…”って、言ってたっけかな、麻衣






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