ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
発熱の代償/その7
ケイコ



涙はもう出てない

止まったっていうか、涙腺、枯れちゃったよ

なんか放心状態で、車のシートにうなだれてるし、私…

隣りにいる剣崎さん、いろいろ喋ってるわ

私の決心聞いて、ホッとしたと思うが、様子を気遣ってる感じだ

取り乱し方が尋常じゃなかったので、気を落ち着かせようとしてるんだろう


...



結局、この茶番の”絵”を描いたのは、麻衣だって言ってる

全く何てヤツだ、よくもこんな女子高生がいたもんだってとこだ!

「だがな、麻衣が香月を監禁した直接の動機は、ヤツを試したかったってことだよ」

それ、わかんねえっての!

何試すんだか、さっぱりだ

「麻衣は自分を唯一、本気で熱くさせてくれたケイコを奪われた気持ちだったろう。その男が、それだけの価値のあるヤツなのか、確かめたかったのさ」

あのね、それで拉致して一晩、暴行かよ!

異常だろうが、そんなの!

「まあ、聞けよ。麻衣は彼のこと、フレたヤツって言ってたよ。俺も感じたが、香月はいつも周りに流されて生きてきたように思う。だってそうだろ?マッドハウスにたどり着いたのも、そこでギター覚えてプロの道開けたのも、K地区の地上げを取りまとめたのも、全部、自分の意思で決めたことじゃない。何となく、流されてきてんだよ、今までずっとな」

だから何だってんだ、そんなの私も承知だわ

好きになった人のことくらい、アンタらに言われるまでもない

「ヤツがそんなハンパな気分でお前に惚れたんなら、許せないって気持ちだったんだろうさ。麻衣はヤツと正面から向き合ってたよ。ヤツもそれを受け止めたんだ。それで、麻衣はヤツを認めたと思う。ヤツのお前に対する気持ちもな」

アホ、そんなの初めっから分かれっての

アキラと私は、そんな薄っぺらな気持ちで好きになってねえって!

ここで、私は剣崎さんに尋ねた

「一つ聞きたいんですけど、あなたたちは、麻衣をコントロールできてるんですか?」

下を向きながらだったから、剣崎さんの顔は見ないで言った

だがこの人、微妙に反応してる…、そう感じた

「それはどういう意味だ?」

剣崎さん、明らかに声のトーンが変わってた






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