ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
発熱の代償/その8
剣崎
「意味って、そのまんまですよ。矢島さんとあなたに都合の悪いこと、麻衣、大丈夫なんですかってことです」
「俺たちは何があろうと、目の前の事態には”適切”に対処する。それだけだよ」
ケイコはずっとうつむいているので、表情が確認できないが、その反応を注意深く伺った
「逆に聞くが、その懸念、お前と彼氏が”一段落後”に、とばっちり喰うんじゃないかと心配してるのか?それとも、麻衣のことを心配してるってのか?お前と香月をさんざん苦しめてきたヤツのこと、憎んでるんじゃないのか?まあ、俺が言える筋じゃないが…」
「憎いさ、麻衣は。締め殺してやしたいほどメラメラしてるよ」
「じゃあ、仮にヤツの身が不測の事態でも、静観ってことか?」
俺はかなりきわどいサインを送っている
...
「あんな奴、どうなってもいいさ。アキラにした卑劣な行為は絶対許せない!許せないよ…」
ケイコはまた嗚咽した
ここが判断のしどころだ…
俺は正面から表情が見えないこの状況で、あらん限り、ケイコの心情を図った
一時の感情的な高ぶりじゃないのか…?
この見極めを誤れば、取り返しがつかないことを俺は、百も千も承知だった
そして、禁じ手ともいえるリトマス試験紙を取り出した
「もうお前の泣きっツラにはうんざりだが、はっきり言うぞ。こういう話になったらな…」
さすがに、一瞬ためらったが、ケイコには一気に突きつけることにした
「8月31日、麻衣が一芝居打ってファミレスに赴く直前まで、香月は麻衣と一緒だった。場所は麻衣の部屋だ。その後、ヤツと会った際、部屋のカギはヤツから直接受け取った。ここまで、いいか?わかるか?」
「…」
相変わらずうつむいているケイコは、無言で泣いている
「ヤツとは麻衣の部屋でサシで会って話をした。ヤツは、今のお前がしたのと意味合いの近い質問をしてきた。彼はこう言ったよ。今回のシナリオで、お前ら3人が不起訴で一応の決着をみた後、俺らとの何らかのしがらみで、”足抜け”できないようなリスクは本当にないのかと…。奴にしては珍しく言質を迫ってきた」
ケイコは一向に顔を上げようとしない
さっきほどまでではないが、肩を震わせて泣いている
俺は続けた
「それでな、俺は問いただした。さっき、お前に言った通りの言葉でな。その答えは、自分とお前だけじゃなく、麻衣もだった。ヤツは麻衣を心底恨んではいるが、身の上を案じてたよ」
こう言った後は、ケイコはやはり動揺したようで、大きな泣き声を上げながら、大粒の涙を流した
「…、その理由を尋ねたら、ヤツは言ったよ。麻衣は憎んでも余りあるが、もう決まりをつけたと。俺が会う前にケリをつけたと言ってた。もちろん、体の関係でってことではない。それは間違いない。だが、ヤツは、一連の麻衣との”ぶつかり合い”で、ヤツを気遣う気持ちに至ったんだ」
俺は、あえて、全部ケイコに明かした
考えてみれば、残酷な仕打ちだったかも知れない
相手は未成年のガキ、しかも女子高生だ
「香月はお前のことを一番に考えてる。それは言うまでもない。麻衣の部屋でヤツと打合せした時も、お前だけは何とかサツには行かせないでほしいと懇願してたしな。おそらく、お前の薬を抜いた期間を考えれば、薬物反応は出ない可能性が強い。その辺をヤツも当て込んで、俺に喰いついてた。だけど、同時に麻衣のこともな…」
言葉がなかなか続かない…
ここまで泣き続けられたら、いい加減、寄り添ってやりたくなる
俺は非情に徹底することの空虚さを、今更ながら再認識させられる
そもそも、非常に徹するとかカッコつけても、所詮は自分らの損得勘定に行きつく
なんともタメ息がでる”仕事”だ
「いいか、結論だ。このことが一応の決着ついて、お前たちが再会できたら、麻衣とは接触するな。俺の言いたいこと、分かるな?香月はフレてるんだ、いい悪いは別としてな。お前が首に縄つけてでもってくらいじゃなきゃ、俺の立場では何ともだ。これ以上は言えないぞ、よく噛み砕いてくれ」
ケイコは、相変わらず下を向いて、しくしく泣き続けていた
剣崎
「意味って、そのまんまですよ。矢島さんとあなたに都合の悪いこと、麻衣、大丈夫なんですかってことです」
「俺たちは何があろうと、目の前の事態には”適切”に対処する。それだけだよ」
ケイコはずっとうつむいているので、表情が確認できないが、その反応を注意深く伺った
「逆に聞くが、その懸念、お前と彼氏が”一段落後”に、とばっちり喰うんじゃないかと心配してるのか?それとも、麻衣のことを心配してるってのか?お前と香月をさんざん苦しめてきたヤツのこと、憎んでるんじゃないのか?まあ、俺が言える筋じゃないが…」
「憎いさ、麻衣は。締め殺してやしたいほどメラメラしてるよ」
「じゃあ、仮にヤツの身が不測の事態でも、静観ってことか?」
俺はかなりきわどいサインを送っている
...
「あんな奴、どうなってもいいさ。アキラにした卑劣な行為は絶対許せない!許せないよ…」
ケイコはまた嗚咽した
ここが判断のしどころだ…
俺は正面から表情が見えないこの状況で、あらん限り、ケイコの心情を図った
一時の感情的な高ぶりじゃないのか…?
この見極めを誤れば、取り返しがつかないことを俺は、百も千も承知だった
そして、禁じ手ともいえるリトマス試験紙を取り出した
「もうお前の泣きっツラにはうんざりだが、はっきり言うぞ。こういう話になったらな…」
さすがに、一瞬ためらったが、ケイコには一気に突きつけることにした
「8月31日、麻衣が一芝居打ってファミレスに赴く直前まで、香月は麻衣と一緒だった。場所は麻衣の部屋だ。その後、ヤツと会った際、部屋のカギはヤツから直接受け取った。ここまで、いいか?わかるか?」
「…」
相変わらずうつむいているケイコは、無言で泣いている
「ヤツとは麻衣の部屋でサシで会って話をした。ヤツは、今のお前がしたのと意味合いの近い質問をしてきた。彼はこう言ったよ。今回のシナリオで、お前ら3人が不起訴で一応の決着をみた後、俺らとの何らかのしがらみで、”足抜け”できないようなリスクは本当にないのかと…。奴にしては珍しく言質を迫ってきた」
ケイコは一向に顔を上げようとしない
さっきほどまでではないが、肩を震わせて泣いている
俺は続けた
「それでな、俺は問いただした。さっき、お前に言った通りの言葉でな。その答えは、自分とお前だけじゃなく、麻衣もだった。ヤツは麻衣を心底恨んではいるが、身の上を案じてたよ」
こう言った後は、ケイコはやはり動揺したようで、大きな泣き声を上げながら、大粒の涙を流した
「…、その理由を尋ねたら、ヤツは言ったよ。麻衣は憎んでも余りあるが、もう決まりをつけたと。俺が会う前にケリをつけたと言ってた。もちろん、体の関係でってことではない。それは間違いない。だが、ヤツは、一連の麻衣との”ぶつかり合い”で、ヤツを気遣う気持ちに至ったんだ」
俺は、あえて、全部ケイコに明かした
考えてみれば、残酷な仕打ちだったかも知れない
相手は未成年のガキ、しかも女子高生だ
「香月はお前のことを一番に考えてる。それは言うまでもない。麻衣の部屋でヤツと打合せした時も、お前だけは何とかサツには行かせないでほしいと懇願してたしな。おそらく、お前の薬を抜いた期間を考えれば、薬物反応は出ない可能性が強い。その辺をヤツも当て込んで、俺に喰いついてた。だけど、同時に麻衣のこともな…」
言葉がなかなか続かない…
ここまで泣き続けられたら、いい加減、寄り添ってやりたくなる
俺は非情に徹底することの空虚さを、今更ながら再認識させられる
そもそも、非常に徹するとかカッコつけても、所詮は自分らの損得勘定に行きつく
なんともタメ息がでる”仕事”だ
「いいか、結論だ。このことが一応の決着ついて、お前たちが再会できたら、麻衣とは接触するな。俺の言いたいこと、分かるな?香月はフレてるんだ、いい悪いは別としてな。お前が首に縄つけてでもってくらいじゃなきゃ、俺の立場では何ともだ。これ以上は言えないぞ、よく噛み砕いてくれ」
ケイコは、相変わらず下を向いて、しくしく泣き続けていた