ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
終われない夏の日/その5
追川



オレが相和会を追求し始めるきっかけは、3年前にさかのぼる

当時、オレは外国人の不法就労問題の取材を続けていた

主に東南アジアから観光ビザで入国させた女性を、接客業などで不法就労させるブローカーの実態に迫っていた

その流れで、あるフィリピン人の若い女性から、”ソウワカイ”という言葉を聞いた

彼女は観光目的で来日していたが、一時、埼玉のパブで働いていた

いわゆる不法就労者となる訳で、摘発されれば当然、捕まる

彼女が言うには、日本で知り合った同じフィリピン人女性から、安全?なアルバイトがあると聞かされたそうだ

要は不法就労でも、ごく短期間ならバレないから大丈夫だと

その店で働く他の外国人女性は、”ソウワカイ”だから”ここ”には警察が来ないと言っていたそうだ

店にいたのは2週間程度だったらしく、実際摘発はされなかった

”ソウワカイ”が、相馬豹一を会長とする相和会だということはすぐわかった


...



それからしばらくして、関西系広域暴○○の元幹部にインタビューをする機会があり、そこで相和会の話が出た

元幹部の話は実に興味深かった

彼は相和会を、関西系の傘下に組み込ませる計略に関わった

結局、独立系の相和会を傘下に収めることはできなかったが、その際、組の創始者でトップの相馬とも遭遇したらしい

その時、”業界”ではすでに伝説化していた、あの”狂気”を目の当たりにし、今まで味わったことのない、異様な恐怖を感じたという

この幹部は、どうやら相和会は警察に”応援”されているようだと言っていた

ここでの”警察”は、県警を指していた

オレは、フィリピン人の女性から聞いた話と繋ぎ合わせた

相和会は県警と特殊な相互関係がある…

そういう疑念が頭をよぎった

ここから、相和会と相馬豹一を追いかける日々が始まった


...


あれ以来、オレは精力的に相和会を取り巻く各方面をあたった

あのフィリピン人女性の証言の”意味”も、ざっくりとは掴めた

相和会が関与する店には、ごく短期ということを暗黙の許容条件とされていたようだ

仮にガザ入れの場合は、周りが知り得ないシグナルが送られてくるから、その際は不法就労者を”空き”にすればいい

この怪しい阿吽の連携が、奴らの間で長く続いていたのだろう

オレは多方面での取材を重ね、”ソウワカイ”の疑問は、こういう結論にたどり着いた

とにかく、取材するにつれ、オレは相和会、いや相馬という稀有な人物像にどんどん吸い寄せられていった

そして、去年の暮れ、衝撃的な情報と出会う


...



相馬が女子高生を使って、族や不良たちの勢力争いに関与している…

その女子高生には、違法薬物を嗜ませているようだと

どうやら一人ではない、囲っている女子高生は二人いるらしい

さらに、この二人の少女を、なんと相馬本人の遠縁の娘に仕立て上げたと

相和会の組員は、それを信じ込んでいるらしいとっも…


・・・


ある意味、幼稚とも大人げないとも言える突拍子のなさ

自分の立場や、周りの目を考慮するということなど、まさに無縁

そんなことを平然かつ大胆にやらかす、その感性

それ自体が、誰もが口を揃えて言う、相馬の”狂気”の正体ではないのか

オレにはそう思えてならない








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