ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
終われない夏の日/その7
追川


2年前、左派市民運動家の喜多さんを脅迫したのは、相和会ではない

関東広域組織の下部組織であった、某暴○○からであった

要するに、相和会とは反目する組織から脅されたことになる

オレは、なぜ敵ともいえる組が、相和会に手を貸すような行動をとったのか疑問だった

当然、喜多さんも同じ疑問を抱いていた

オレと喜多さんとは、一緒に”それ”を究明することにした

そのカラクリの核心には、割とすんなり行き着いた


...



この組は、その直近で、相和会と揉めていた

例によって、”独立系の旗手”を広域組織に組み込もうとする工作に絡む抗争だったが、相和会はこの時もそれを一蹴した

無論、極道の世界だ…、牙を剥いた相手をタダでは済まさない

だが、相和会の特執すべきところは、劣敗義務を負わせる手法が、”他”とは若干違うということだ

ここでは、ちょうど、地元住民まで巻き込んだ市民運動家グループへの恫喝を課した

相和会に連動する地元住民も、何故、反目する”広域”の下部組織が関与してくるのか、疑問だったろう

こういった猫だましを、相和会は随所で発揮していた

その一翼を担わせるのに、屈服させた相手を巧みに、なにげなく利用したということだろう

ここには、市民の目から、いわゆる暴○○と自らに一線を画すという、相和会のしたたかな読みが見え隠れする

その後、オレは相和会の周辺を洗いまわって、徐々に深部へと近づいていった

”それ”は、あくまで推測の域を出ないが、広域組織に組み込まれない相和会を県警が模範ケースとして、”応援”してるようだと…

名だたる組織が、常に相和会攻略に失敗した背景には、肝心な局面で、”権力”がさりげなく関与している気配は、考えてみれば頷ける節がある

こうなれば、ジャーナリズムの世界で長年メシを食ってきた端くれとして、記者魂に火が付いくというものだ

裏を取って、相和会の実態の意味しているモノを暴いてやる

この決心は、日に日に強いものとなっていった


...




その間、当面は”地道”にネタを追いかけた

去年、相和会の大幹部、建田が得意とする地上げ事業に絡む、スキャンダルネタが入った

立退きを強く拒絶する地権者の独身女性に、”色仕掛け”の計略があったらしいと

喜多さんの知人がその当事者で、泉典子さんという40代の気丈な女性だ

ウチはその人から一部始終を聴き取って、「週刊実話キャッチ」ですっぱ抜いた

まあ、奴らにはジャブ程度の追及ネタと思ったが、これが意外と世間の関心を買った

結局、2週連続の掲載で明らかに販売部数が伸び、かなりの反響を得ることができたんだ

オレはこうした細かい追及材料を、その後も根気強く当たって行った



...



その積み重ねから、喜多さんルートで、ある衝撃的な情報を得た

それが例の女子高生と相馬豹一本人との、妖しい関係だった





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