ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
その3


「ふざけやがって、クソー!!」

ガシャーッ…、バタン…!

マッドハウス建物内の奥にあるオーナー室兼打合せルームでは、大きな衝突音が響いていた

建田の蹴りあげたキャスター付きの椅子が、勢いよく壁に激突して転がったのだ

「…叔父貴、いくらなんでもこんなバカげたことってありますか‼能瀬ごときが小間使いで囲ってる、組の杯も受けていないサンピンのガキ2匹を俺に遣わすなんて!矢島と剣崎はどういうつもりなんだ‼にここまでコケにされたんじゃ、気が済まねえっすよ」

「よう、宗…、まあ落ち着けって。お前にその通告書を手渡すのは、相馬豹一血縁2号の娘だ。サンピンは単に未成年者を輸送する運転手さ」

「しかし…」

顔を紅潮させた建田は、ソファにどっかと座っている明石田の正面で荒い息を整えていた

...


「おい、間宮、ボケッしてんじゃねーよ‼さっさとそのイス、ここ持っこいって!」

「あ…、はい…!」

建田は、部下で浅田の同僚である間宮が素早く運んだイスにどっかと腰を下ろすと、座ったまま足でキャスター付きのイスを移動させ、明石田の左横に寄っていった

「間宮、お前は外出てろ」

「はい…」

間宮が逃げるように室外に出たあと、明石田と自分の二人だけになったことを確認した建田は、改まったような口調で話し出した

...


「叔父貴…、すんません。さっきは、つい頭に血が上っちまって…」

「…いいか、宗。矢島と剣崎はお前の出方次第で方針を決めるだろうよ。お前だってそのくらいのこと、腹括った上で葬儀をすっぽかしたんだろうが、ああ…?」

「まあ、ハンパな覚悟じゃあねえですよ、そりゃあ。だが、仕掛けてきたのはあっちの方だった。それは叔父貴も認めてくれますよね?」

「ああ…。今日、矢島と剣崎にはよう、しっかり訓読を入れたって。だが、連中が意図的にとかってんで勘ぐって拗ねちまうんじゃ、そこらのガキだろうが。今は業界中の目が光ってるんだぞ。ギラギラさ。当たり前だろうが‼あの、相馬豹一が死んだんだから。それなのに、何やってんだ…?組を支えるトップ二人が…。テメーも、たいがいにしろって‼」

「はあ…、面目ねえっすわ、叔父貴にそう言われれば…」

明石田は、ソファに背を持たれた姿勢を崩さずに無言のまま、申し訳なさそうにしている建田の表情を仏頂面で眺めていた





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