ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
その6
「…お忙しいところすいません。横田競子です。本日は、剣崎さんから預かってきた書面をお届けに参りました」
「いや、ご苦労さん。建田だ。…こちらは伊豆の叔父貴で明石田さんだよ」
ケイコはソファにどっかと腰を下ろしている明石田にも改めて自己紹介し、お辞儀をした
「ほほー…、礼儀正しい娘さんだな。…この場には立ちあわせてもらう。よろしく願おう」
明石田はそう言った後、建田に目線を送った
「まあ、ここに掛けなさい」
「はい。では、失礼します…」
建田に促され、ケイコが明石田の正面に座ると、その横に建田が腰を下ろした
...
”なんか緊張してきた…。この手紙の中身は大体予想つくし…。建田さんの反応はさっきの二人への態度が物語ってるでしょ…。とにかく私は手渡すだけで終わりだよ”
ケイコは早速、バッグから定型サイズの封筒をとりだした
「こちらになります…」
「うむ…。では、確かに受け取った。…でだ、今からここでコイツの中身を一読するんで、君はしばらくここにいてくれ」
「はあ…、でも…。私は手渡しだけを言いつかってきましたので…」
ここで明石田が穏やかな表情を浮かべ、ケイコに向かって声をかけた
「ケイコさん…、建田がこれを読んだ後のことは俺が剣崎と矢島に告げる。君はただ、建田が手紙に目を通したところまで立ち合ってくれればいい」
「わかりました…」
その後、建田は封筒を手で開け、中の便せんをとりだして一読した
ケイコは隣で、建田のその様子を遠慮がちに伺っていた
”果たして、どんな反応を示すのか…。ちょっと怖いよ…”
...
ケイコが”ここ”へ赴く数時間前…
「…いいか、ケイコ。この封書の中身は”通告書”だ。建田さんへのな。今日、会長の葬儀を欠席した理由を求める、言わば葬儀委員長の立場にある矢島さんからの出頭要請だ。焼香が済んだら、こいつを建田さんの元に届けてもらいたい」
「えっ…、私がですか?」
「ああ。亡くなった相馬会長から遠縁にあたる娘として、この1年、力を与えられていたお前が、俺から直接頼まれたということでな。ただし、能瀬のところの非正規組員を2人つける。建田さんのところには3人で出向くんだ」
ケイコは剣崎の意図がすぐには汲み取れず、きょとんとしていた
剣崎はそんなケイコの様子を察して、やや笑みをこぼしながら”補足”した
「建田さんは、お前と麻衣の区別もついていないばずだ。ただ会長が生前、血縁だと宣言した女子高生2人を面倒見てると…、そこまでの認識だよ。お前を遣わすのは、それを”読み込ん”でってことだ」
「…」
「…お前は感性が鋭いし頭の回転が速い。なぜ、矢島さんと俺がお前にってことだったのかは、”そいつ”を建田さんが受け取った”その場”で概ね理解できると思う」
「はあ…」
ケイコは依然、剣崎の言葉が今ひとつかみ砕けなかったが、その封筒を剣崎から受け取った
その時、5Mほど離れた場所から野太い声が届いた
「…剣崎、じゃあ、俺は行くからな」
「叔父貴…、お願いします」
”あっ…、あの人、伊豆の明石田組長か…”
急ぎ足で葬儀場を後にする明石田と、ケイコはほんの一瞬だが、目が合った…
...
建田の便せんとのにらめっこは、結構な時間を要していた
終始、無言かつ無表情のまま…
ケイコは”通告書”に目を通している建田と、その様子をじっと見つめている明石田に視線をチラッ、チラッと交互させながら、この沈黙が終わるのを待っていたが…
”…そうか!”
ケイコはこの時、ふと思いだしていたのだ
剣崎から預かった封筒を手にして、葬儀場から出る際のタクロウとのやりとりを…
「…お忙しいところすいません。横田競子です。本日は、剣崎さんから預かってきた書面をお届けに参りました」
「いや、ご苦労さん。建田だ。…こちらは伊豆の叔父貴で明石田さんだよ」
ケイコはソファにどっかと腰を下ろしている明石田にも改めて自己紹介し、お辞儀をした
「ほほー…、礼儀正しい娘さんだな。…この場には立ちあわせてもらう。よろしく願おう」
明石田はそう言った後、建田に目線を送った
「まあ、ここに掛けなさい」
「はい。では、失礼します…」
建田に促され、ケイコが明石田の正面に座ると、その横に建田が腰を下ろした
...
”なんか緊張してきた…。この手紙の中身は大体予想つくし…。建田さんの反応はさっきの二人への態度が物語ってるでしょ…。とにかく私は手渡すだけで終わりだよ”
ケイコは早速、バッグから定型サイズの封筒をとりだした
「こちらになります…」
「うむ…。では、確かに受け取った。…でだ、今からここでコイツの中身を一読するんで、君はしばらくここにいてくれ」
「はあ…、でも…。私は手渡しだけを言いつかってきましたので…」
ここで明石田が穏やかな表情を浮かべ、ケイコに向かって声をかけた
「ケイコさん…、建田がこれを読んだ後のことは俺が剣崎と矢島に告げる。君はただ、建田が手紙に目を通したところまで立ち合ってくれればいい」
「わかりました…」
その後、建田は封筒を手で開け、中の便せんをとりだして一読した
ケイコは隣で、建田のその様子を遠慮がちに伺っていた
”果たして、どんな反応を示すのか…。ちょっと怖いよ…”
...
ケイコが”ここ”へ赴く数時間前…
「…いいか、ケイコ。この封書の中身は”通告書”だ。建田さんへのな。今日、会長の葬儀を欠席した理由を求める、言わば葬儀委員長の立場にある矢島さんからの出頭要請だ。焼香が済んだら、こいつを建田さんの元に届けてもらいたい」
「えっ…、私がですか?」
「ああ。亡くなった相馬会長から遠縁にあたる娘として、この1年、力を与えられていたお前が、俺から直接頼まれたということでな。ただし、能瀬のところの非正規組員を2人つける。建田さんのところには3人で出向くんだ」
ケイコは剣崎の意図がすぐには汲み取れず、きょとんとしていた
剣崎はそんなケイコの様子を察して、やや笑みをこぼしながら”補足”した
「建田さんは、お前と麻衣の区別もついていないばずだ。ただ会長が生前、血縁だと宣言した女子高生2人を面倒見てると…、そこまでの認識だよ。お前を遣わすのは、それを”読み込ん”でってことだ」
「…」
「…お前は感性が鋭いし頭の回転が速い。なぜ、矢島さんと俺がお前にってことだったのかは、”そいつ”を建田さんが受け取った”その場”で概ね理解できると思う」
「はあ…」
ケイコは依然、剣崎の言葉が今ひとつかみ砕けなかったが、その封筒を剣崎から受け取った
その時、5Mほど離れた場所から野太い声が届いた
「…剣崎、じゃあ、俺は行くからな」
「叔父貴…、お願いします」
”あっ…、あの人、伊豆の明石田組長か…”
急ぎ足で葬儀場を後にする明石田と、ケイコはほんの一瞬だが、目が合った…
...
建田の便せんとのにらめっこは、結構な時間を要していた
終始、無言かつ無表情のまま…
ケイコは”通告書”に目を通している建田と、その様子をじっと見つめている明石田に視線をチラッ、チラッと交互させながら、この沈黙が終わるのを待っていたが…
”…そうか!”
ケイコはこの時、ふと思いだしていたのだ
剣崎から預かった封筒を手にして、葬儀場から出る際のタクロウとのやりとりを…