ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
その7
「じゃあ、ケイコさん…、今から俺の運転で一旦、あなたの自宅へ寄ります。そこで制服から私服に着替えてもらって、その足ですぐにマッドハウスに向かいますんで…。その封筒、絶対に忘れないでくださいよ」
「了解したわ。…でさあ、タクロウさんとシンゴさん、能勢さんからは何て言いつかったの?”これから”のことは」
「ケイコさんと”一緒”に、マッドハウスにいるはずの建田親分にその手紙…、矢島親分からの”それ”が入った封筒を手渡してこいと…。3人で…。そういう命です」
「そうなの…」
ケイコはあの時、何気なくタクロウに尋ねた自分の深意が目の前に広がっていた
それは明快だった…
”さっき、建田さんがタクロウさんとシンゴさんの二人に恫喝して突きつけた言葉は、剣崎さんが相手の受け入れる姿勢を図るための投げつけたボールに対する答えだったのかもしれない。でもそれは、あくまで封筒を私から受け取るところまでの承諾…。だとしたら、この手紙の内容に対する意思は、私の目に触れさせることでボールを返すつもりなのかな…”
剣崎の予測通り、ケイコは”概ね”剣崎と矢島の意図が読み取れていた
...
そして、通告書の熟読を終えた建田は、その便せんを明石田に渡した
明石田は、ものの10数秒で一読を済ませるとソファから背を離し、半腰ではす向かいの建田に便せんを黙って返却した
それを再び手にした建田は一度、明石田と目を合わせた後、左横のケイコに顔を向けた
すると、建田は意味深気な軽い笑みを浮かべて手にしていた便せんをゆっくりと破った
”ビリビリビリ…”
そのごくありふれた音感は、3人の沈黙の場に何とも厳粛な響きを与えていた
数秒後…、その余韻が消えさるのを確認すると、建田は自らが横二等分に切り裂いた紙片をテーブルの上に置いた
「…叔父貴、この通告書のとおり、組に出向きますわ。そういうことで、よろしくお計り下さいますか」
建田の口調は妙に平静だった
...
「わかった」
ここで建田は、明石田から今日の一件に於ける最終の合意を取りつけたことを確信し、ふうっと一息ついてケイコに向かってやや前かがみで告げた
「よし!ケイコちゃんと言ったかな…、今日はご苦労様だった。ここで目にしたことは、剣崎に聞かれたらありのまま答えてくれればいい。さっきの二人への言動もな」
「はい…」
「うん…。じゃあ、せっかくだから今日、ここの小屋を閉鎖するに当たってのイベントライブがあるから、見て行ったらいい。マッドハウス専属のバンドで、ロード・ローラーズって言うんだが、今はプロで活躍してる歴代メンバーも揃うからよう、えらく盛り上がるはずだ。外に並んでた連中は、みんなそれを見に来たんだぜ…、はは…」
建田はやや自慢げなしゃべり方になって、思わずほくそ笑んでいた…
かなり突飛な話の転換となって、ケイコはそんな建田に目をぱちくりとさせ、相づち程度の言葉しか出なかった
「そうなんですか…」と…
”やくざの親分がいきなりライブやらバンドとかって‥。なんだかえらくミスマッチで、拍子抜けしちゃうなあ…(苦笑)”
...
ケイコがややあっけにとられているところで、今度は明石田が口を開いた
「ケイコちゃん、今日はいろいろ手間掛けたな。…これは、俺からの駄賃だ」
そう言うと、明石田は財布の中から万札2枚を掴んでテーブルを這わせ、ケイコの目の前に差し出した
「あの、こんなことは…」
「ハハハ…、遠慮なんかすんな。もらっとけばいいって。じゃあ、俺からもだ。まあ、叔父貴のメンツ潰しちゃあまずいんで、こっちは半分ってことでな」
今度は建田から万札一枚がケイコの前に添えられた
”宗め…!俺の体面にかこつけやがって。相変わらずドケチだわ(苦笑)”
ケイコの前に並んだ万札3枚を目にしながら、明石田は思わず苦笑を漏らすのだった
「じゃあ、ケイコさん…、今から俺の運転で一旦、あなたの自宅へ寄ります。そこで制服から私服に着替えてもらって、その足ですぐにマッドハウスに向かいますんで…。その封筒、絶対に忘れないでくださいよ」
「了解したわ。…でさあ、タクロウさんとシンゴさん、能勢さんからは何て言いつかったの?”これから”のことは」
「ケイコさんと”一緒”に、マッドハウスにいるはずの建田親分にその手紙…、矢島親分からの”それ”が入った封筒を手渡してこいと…。3人で…。そういう命です」
「そうなの…」
ケイコはあの時、何気なくタクロウに尋ねた自分の深意が目の前に広がっていた
それは明快だった…
”さっき、建田さんがタクロウさんとシンゴさんの二人に恫喝して突きつけた言葉は、剣崎さんが相手の受け入れる姿勢を図るための投げつけたボールに対する答えだったのかもしれない。でもそれは、あくまで封筒を私から受け取るところまでの承諾…。だとしたら、この手紙の内容に対する意思は、私の目に触れさせることでボールを返すつもりなのかな…”
剣崎の予測通り、ケイコは”概ね”剣崎と矢島の意図が読み取れていた
...
そして、通告書の熟読を終えた建田は、その便せんを明石田に渡した
明石田は、ものの10数秒で一読を済ませるとソファから背を離し、半腰ではす向かいの建田に便せんを黙って返却した
それを再び手にした建田は一度、明石田と目を合わせた後、左横のケイコに顔を向けた
すると、建田は意味深気な軽い笑みを浮かべて手にしていた便せんをゆっくりと破った
”ビリビリビリ…”
そのごくありふれた音感は、3人の沈黙の場に何とも厳粛な響きを与えていた
数秒後…、その余韻が消えさるのを確認すると、建田は自らが横二等分に切り裂いた紙片をテーブルの上に置いた
「…叔父貴、この通告書のとおり、組に出向きますわ。そういうことで、よろしくお計り下さいますか」
建田の口調は妙に平静だった
...
「わかった」
ここで建田は、明石田から今日の一件に於ける最終の合意を取りつけたことを確信し、ふうっと一息ついてケイコに向かってやや前かがみで告げた
「よし!ケイコちゃんと言ったかな…、今日はご苦労様だった。ここで目にしたことは、剣崎に聞かれたらありのまま答えてくれればいい。さっきの二人への言動もな」
「はい…」
「うん…。じゃあ、せっかくだから今日、ここの小屋を閉鎖するに当たってのイベントライブがあるから、見て行ったらいい。マッドハウス専属のバンドで、ロード・ローラーズって言うんだが、今はプロで活躍してる歴代メンバーも揃うからよう、えらく盛り上がるはずだ。外に並んでた連中は、みんなそれを見に来たんだぜ…、はは…」
建田はやや自慢げなしゃべり方になって、思わずほくそ笑んでいた…
かなり突飛な話の転換となって、ケイコはそんな建田に目をぱちくりとさせ、相づち程度の言葉しか出なかった
「そうなんですか…」と…
”やくざの親分がいきなりライブやらバンドとかって‥。なんだかえらくミスマッチで、拍子抜けしちゃうなあ…(苦笑)”
...
ケイコがややあっけにとられているところで、今度は明石田が口を開いた
「ケイコちゃん、今日はいろいろ手間掛けたな。…これは、俺からの駄賃だ」
そう言うと、明石田は財布の中から万札2枚を掴んでテーブルを這わせ、ケイコの目の前に差し出した
「あの、こんなことは…」
「ハハハ…、遠慮なんかすんな。もらっとけばいいって。じゃあ、俺からもだ。まあ、叔父貴のメンツ潰しちゃあまずいんで、こっちは半分ってことでな」
今度は建田から万札一枚がケイコの前に添えられた
”宗め…!俺の体面にかこつけやがって。相変わらずドケチだわ(苦笑)”
ケイコの前に並んだ万札3枚を目にしながら、明石田は思わず苦笑を漏らすのだった