ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
その9


「ふふ…、誠一、落ち着けって。いいか、考えてもみろよ。そもそもだ、相馬のオヤジが死んじまってよう、残されたもんで今まで通り、東西の大手と張り合っていけるか?そんな訳ねーよ。だろう?」

「ああ、俺もそう思う。で、どうすればいいかだが…」

「簡単さ。金だよ、経済力だ。フン…、今の相和会を財政で支えてるのは誰だってことさ」

「はは…、そりゃあ間違いなく兄貴、アンタだわ」

ここで北原は兄貴分がこの先口にすることが読みとれ、思わず笑みを浮かべていた


...


「ふふふ…、もう極道の世界でも、切った張ったで政治を動かす時代は終わってるって。とっくにな…。誠一、これからの時代、俺たち業界も稼げるモンがイコール力を持つ者になる。そのことを明石田の叔父貴は、誰よりもよく承知しているさ」

北原は、この建田の持論を聞くのがたまらなく好きだった…

「そうだよな。何しろ、相和会は原則みかじめ禁止なんだからよう。その上で他の稼ぎを上げられる人間がトップに就かなきゃ、早晩、東西いずれかに食われるのは明らかだって」

「そう言うことだ。だからよう、叔父貴に言われたと思うが、周りからの甘言には十分気をつけろよ。そんなことで足元すくわれたら元も子もねえ。みんなにもよく言っとけ。絶対、墓穴を掘るなってな。今が一番大事な時だ。油断大敵だぞ!」

「おお、任せてくれ、兄貴。はは…、要は俺達が次の相和会を牛耳れれば、それでいいんだ。大手なんかに愛想振りまく必要ねえよ」

「そうさ。そう言うことさ、要はな。誠一…、今が正念場だ。頼むぞ…」

「ああ、やってやる!」


...


この日、建田は改めて自身の頭を整理した

”…今回の跡目争いは事実上、矢島サイドがこっちの敵失を得られるかどうかさ。単に多数派工作で矢島が後を継いだとしても、俺が稼ぎをコントロールできる。つまり、相和会の財政は俺の手にあるんだ。そんなことは矢島も織り込んでるさ。…何しろ、奴らに攻撃どころを与えないことだ。その為には…、細心の注意を払わなければ…”

北原からの電話を切った後、建田は厳しい表情でそう自分に言い聞かせていた…




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