ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
一代の雄・相馬豹一、最後のダブルミーニング/その1
剣崎
いよいよだ
やはり”1年”だったか…
俺の脳裏には去年の夏がフィードバックされていた
...
あの時、オレの耳に届いた”1年後”というキーワードは、正確には相馬会長と横田競子の二人からだった
矢島さんや麻衣にもその”予感”はあったかもしれないが、少なくともオレには伝達された認識がない
その観点からすると、今日の会長との一言、一息は一切逃せない…
...
「…親父さん、伊豆の叔父貴と建田さんが見えました!」
「うむ…」
「おー、矢島、剣崎…、ご苦労だな。で、兄貴だが…」
矢島さんと俺が病室の前の廊下で二人を迎えると、明石田の叔父貴は早速切り出した
”この後”、矢島さんと跡目を争うことになるであろう建田さんは、叔父貴の後ろで我々とは視線を合わせず、病室の入り口に目をやっていたよ
...
「お二人が来られたら、まずは叔父貴からお話しされたいとのことです」
「よし、じゃあ、俺が先に行ってくる…」
明石田泰造…
戦後極道界を席巻した問題児・相馬豹一の生涯唯一、正式な兄弟分の杯を貫徹した伊豆一帯を仕切る大親分だ
相馬会長の余命わずかという風潮が業界に飛び交う中、早くも広域組織が蠢き出している今も、来たるべき時を見越し、東西間を硬軟巧みに使い分けて立ちまわってくれている
明石田さんの存在がなかったら、相和会はとっくに東西いずれかの”大手”に飲み込まれていたはずだ
この人が長年、関東と関西双方の防波堤となってくれたおかげで、静岡と神奈川一部の弱小組織などは、他の縄張りでは到底叶わない実入りを長年享受できたんだからな
文句なく業界の大物と言っていい
...
叔父貴と相馬さんの今生の別れは約20分強に渡った
俺としては何とも絶妙の時間に感じたよ
「…ふう、俺はこれで済んだ。次は建田と会うそうだ」
「では…。ああ、じゃあ先にな…」
建田さんは明らかに叔父貴と俺達二人を区別して言葉を投げ、病室に向かった
「…兄貴からは特段なかった。”後”については残った者で自由にとな。まあ、今までと変わらずだ。建田にも同じことを伝えるだろう」
「叔父貴、今後のことはお手数煩わせると思いますが、何しろよろしくお願いします」
「ああ、とにかくいい按配に収めんとな。いいか…、今から言っとくが、跡目云々より相和会はどんな土砂降りに見舞われようとも、東西どっちの傘も受け取らん。少なくとも俺の目の黒いうちはな」
叔父貴はきっぱり断言してくれた
どうやらこの人はノーサイドだと見てよさそうだ
剣崎
いよいよだ
やはり”1年”だったか…
俺の脳裏には去年の夏がフィードバックされていた
...
あの時、オレの耳に届いた”1年後”というキーワードは、正確には相馬会長と横田競子の二人からだった
矢島さんや麻衣にもその”予感”はあったかもしれないが、少なくともオレには伝達された認識がない
その観点からすると、今日の会長との一言、一息は一切逃せない…
...
「…親父さん、伊豆の叔父貴と建田さんが見えました!」
「うむ…」
「おー、矢島、剣崎…、ご苦労だな。で、兄貴だが…」
矢島さんと俺が病室の前の廊下で二人を迎えると、明石田の叔父貴は早速切り出した
”この後”、矢島さんと跡目を争うことになるであろう建田さんは、叔父貴の後ろで我々とは視線を合わせず、病室の入り口に目をやっていたよ
...
「お二人が来られたら、まずは叔父貴からお話しされたいとのことです」
「よし、じゃあ、俺が先に行ってくる…」
明石田泰造…
戦後極道界を席巻した問題児・相馬豹一の生涯唯一、正式な兄弟分の杯を貫徹した伊豆一帯を仕切る大親分だ
相馬会長の余命わずかという風潮が業界に飛び交う中、早くも広域組織が蠢き出している今も、来たるべき時を見越し、東西間を硬軟巧みに使い分けて立ちまわってくれている
明石田さんの存在がなかったら、相和会はとっくに東西いずれかの”大手”に飲み込まれていたはずだ
この人が長年、関東と関西双方の防波堤となってくれたおかげで、静岡と神奈川一部の弱小組織などは、他の縄張りでは到底叶わない実入りを長年享受できたんだからな
文句なく業界の大物と言っていい
...
叔父貴と相馬さんの今生の別れは約20分強に渡った
俺としては何とも絶妙の時間に感じたよ
「…ふう、俺はこれで済んだ。次は建田と会うそうだ」
「では…。ああ、じゃあ先にな…」
建田さんは明らかに叔父貴と俺達二人を区別して言葉を投げ、病室に向かった
「…兄貴からは特段なかった。”後”については残った者で自由にとな。まあ、今までと変わらずだ。建田にも同じことを伝えるだろう」
「叔父貴、今後のことはお手数煩わせると思いますが、何しろよろしくお願いします」
「ああ、とにかくいい按配に収めんとな。いいか…、今から言っとくが、跡目云々より相和会はどんな土砂降りに見舞われようとも、東西どっちの傘も受け取らん。少なくとも俺の目の黒いうちはな」
叔父貴はきっぱり断言してくれた
どうやらこの人はノーサイドだと見てよさそうだ