ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
一代の雄・相馬豹一、最後のダブルミーニング/その4
剣崎



「…二人とは先週ここへ呼んで話をした。承知してるな?」

「はい…、勝田から同じ日にと。ケイコの方が少し時間が長く、麻衣の時は中から笑い声が聞こえたと言ってました。承知してるのはその程度ですが…」

「うむ…。ケイコはこの夏に”引く”気だが、麻衣はまだもの足りんようだ。ケイコには麻衣にクスリを一緒に辞めるよう、うまく話してくれるように言っておいたが…。麻衣のことだ、すんなりはないだろう」

「…」

会長はほぼ無表情で、どこかしんみりとした口調だった

「麻衣はイカレた俺の分身に見えてな。あまり無理は言えなかった。最後だってのに、冗談言いあってよう。いい別れができたわ…」

70を超えた老人と16の小娘が今生の別れと自覚してるのにな…

何という壮絶な会話ができるんだよ

俺は鳥肌が立つ思いだった

...


「俺が死んじまっても、ヤツはさして悲しむことなどないさ。だが、今の立場の俺がいなくなる意味はしっかり理解できてるはずだ。これを転機として、麻衣はまた何かを見つけるだろう。自らを挑発してな」

「自分はどう対処すればいいんでしょうか、会長…」

俺はどこか会長の答えにすがっていたな

ふふ…、今やあのガキは、極道の俺でも取扱いに神経を悩ます厄介極まる危険人物に達してる

この俺がだ

まるでパロディだって(自嘲笑)

...


「剣崎、頭を切り変えるんだ。まず、ケイコは何が何でも戻す。これを第一で最優先にな。あの子なら誘導してやれば自分で成し遂げる。俺との約束をな」

会長のこの一言で俺は若干だが楽になった

何しろ明快な指示だった

よし、ケイコはそれでいく

彼女もそのつもりなら、麻衣と切り離しができれば何とかケリはつけられるだろう

さあ、その麻衣だ…

会長はどんな指示をこの俺に発するのか…


...


「ふふ‥、ここに至っての麻衣はよう、もう丸めこめる存在を超えてるって。お前でも、矢島でも無理だ。とりあえず自覚しろ。そこで、俺の葬式には麻衣を親族側で出席させるんだ。ケイコはあくまで一般参列者だ。勝田には直接指示してある。お前には直接、俺の口から告げるともな」

「…」

麻衣を親族として…!

会長のそこんとこの深意とは…

果たしてどんな意味を持っていると言うんだ…





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