ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
一代の雄・相馬豹一、最後のダブルミーニング/その5
剣崎
「剣崎よう…、俺の麻衣への具体的な希望はそれだけだ。ここで留める。その意味はお前が己の頭で導け。だが、わかってると思うが”解”はひとつとは限らん。あらゆる状況、人の思惑、その他諸々の要因をとりこぼさず兼ね、判断するんだ」
出たぞ!
ダブルミーニングだ!
しかも、これは究極のそれだ…
「…俺があの世へ旅立った後を数十年先まで見通してな。いろんなその時を必死になってイメージすれば、おのずとだ。麻衣にはその判断に基づいて然るべき接し方をすれば、アイツの方から具体的な形をお前に差し出すからよう。そこをしっかり押さえておく必要があるぞ。肝に銘じておけ」
会長の言葉を聞き終えた後、額からはどっと汗が滲み頬を伝わった
そして、メモをとる俺の手は震えていたよ
...
俺は会長の一言一句を正確にメモに残すため、何度か聞きなおした
「あの、すいませんが、会長…。最初に言われた言葉とそっくり同じで願います」
その際、俺はこう強い口調でお願いしたわ
このダブルミーニングにトンチンカンなマネ、絶対に許されない
会長の深意を掴むんだ!
むろん、ダブルミーニングだから、複数の解釈を生む想定Xになる
それは何なんだ…
...
「…よし、もう一つだけ加えよう。泰造には麻衣をまだ引き合わせていなかったな、剣崎?」
「はい。麻衣とケイコのことは最低限でしか伝えていません。まあ、クスリのことは言ってありますが。叔父貴もまだ会わなくていいとのことでしたので…」
「うん。ならよう、俺の葬儀には顔を合わせるだけにしとけ。ヤツに麻衣と話をさせるのは、今言った俺の言葉をお前が消化しきって、実際の着手にかかった後がいい。ただ、直後じゃないと意味ないだろう。俺がなぜこのことを付け加えてお前に残したか、よく考えてみろ。そうすりゃ、お前なら目の前に浮かんでくるさ。それがお前のなすべき道標だと信じていい」
「はあ…」
「…繰り返すぞ!そこでは、麻衣が起こしうる反応を見越すことが欠かせない。まずは、俺の葬儀の場を頭に浮かべるんだ。麻衣は親族側で参列者から認知される。それを生々しく想像してみろ。去年の麻衣ではなく、今の麻衣だぞ。相馬豹子も内包した相馬豹一とそっくりのイカレた娘として、この業界に周知されたヤツだ。そこんとこをよくな、剣崎…」
「会長…!」
その後、”最後”のあいさつを済ませ、俺は椅子から立ちあがった
「…陽が眩しいな。カーテンを頼む」
「はい…」
俺は窓のカーテンを静かに閉じ、我々二人の”最後”を見届けてくれた西陽を送りだした
そして、その立会人は無言でここから立ち去った
剣崎
「剣崎よう…、俺の麻衣への具体的な希望はそれだけだ。ここで留める。その意味はお前が己の頭で導け。だが、わかってると思うが”解”はひとつとは限らん。あらゆる状況、人の思惑、その他諸々の要因をとりこぼさず兼ね、判断するんだ」
出たぞ!
ダブルミーニングだ!
しかも、これは究極のそれだ…
「…俺があの世へ旅立った後を数十年先まで見通してな。いろんなその時を必死になってイメージすれば、おのずとだ。麻衣にはその判断に基づいて然るべき接し方をすれば、アイツの方から具体的な形をお前に差し出すからよう。そこをしっかり押さえておく必要があるぞ。肝に銘じておけ」
会長の言葉を聞き終えた後、額からはどっと汗が滲み頬を伝わった
そして、メモをとる俺の手は震えていたよ
...
俺は会長の一言一句を正確にメモに残すため、何度か聞きなおした
「あの、すいませんが、会長…。最初に言われた言葉とそっくり同じで願います」
その際、俺はこう強い口調でお願いしたわ
このダブルミーニングにトンチンカンなマネ、絶対に許されない
会長の深意を掴むんだ!
むろん、ダブルミーニングだから、複数の解釈を生む想定Xになる
それは何なんだ…
...
「…よし、もう一つだけ加えよう。泰造には麻衣をまだ引き合わせていなかったな、剣崎?」
「はい。麻衣とケイコのことは最低限でしか伝えていません。まあ、クスリのことは言ってありますが。叔父貴もまだ会わなくていいとのことでしたので…」
「うん。ならよう、俺の葬儀には顔を合わせるだけにしとけ。ヤツに麻衣と話をさせるのは、今言った俺の言葉をお前が消化しきって、実際の着手にかかった後がいい。ただ、直後じゃないと意味ないだろう。俺がなぜこのことを付け加えてお前に残したか、よく考えてみろ。そうすりゃ、お前なら目の前に浮かんでくるさ。それがお前のなすべき道標だと信じていい」
「はあ…」
「…繰り返すぞ!そこでは、麻衣が起こしうる反応を見越すことが欠かせない。まずは、俺の葬儀の場を頭に浮かべるんだ。麻衣は親族側で参列者から認知される。それを生々しく想像してみろ。去年の麻衣ではなく、今の麻衣だぞ。相馬豹子も内包した相馬豹一とそっくりのイカレた娘として、この業界に周知されたヤツだ。そこんとこをよくな、剣崎…」
「会長…!」
その後、”最後”のあいさつを済ませ、俺は椅子から立ちあがった
「…陽が眩しいな。カーテンを頼む」
「はい…」
俺は窓のカーテンを静かに閉じ、我々二人の”最後”を見届けてくれた西陽を送りだした
そして、その立会人は無言でここから立ち去った