ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
一代の雄・相馬豹一、最後のダブルミーニング/その6
剣崎



見えた!

いや、見えてきたぞ…!

業界連中から映る、相馬豹子もチラつかせた”今の”麻衣が

あのイカレた小娘のパンパンに膨らんだそのポテンシャルも

そうさ…、会長はまだ明石田の叔父貴に麻衣を接近させる時期ではないとメッセージを送ってくれたんだ

つまり、”その時期”は、麻衣を爆発させる必要があるタイミング…、そしてヤツを最大にイカレ熟させてからでないと…

会長のぶっ飛んだ感性とイカレたエネルギーを最大に活用し続けてきたあの叔父貴が、”その時”に麻衣を見染めれば、事態は猛進する

フルスロットルで…

従って、”その時期”を作りだすことこそが、俺の最初にとっかかるべき作業なんだ

...


その最初の一手…

ふふ…、これこそ会長が”決定事項”として麻衣の親族側出席を、それこそなぜ、”最後のミーティング”で俺に告げたのか…

その理由を考えたら紐解けたぞ

まずもっては、”すべて”に麻衣をぶつけるんだ

葬儀にやってくる関東、関西の業界関係者で言うには収まらず、”身内”にも…

そう、身内…、相和会の下から上まで全部だ

その際、麻衣を親族側からの葬儀出席とした本意は、誰によってのものなのかという切り口での”主”がカギになる

カリスマ親分が逝去したことで早くも思惑渦巻く中、その葬儀に相馬さんが晩年”囲った”血縁と噂のイカレ娘をかざす側さ

言うまでもなく、その麻衣を握る側の席には矢島さんを支える人間で固める

さらに、そこからオポジションの人間はできれば排除する

正確にはご遠慮願う状況に追い込む、持っていく

俺のとっ始めの戦略は決した

...


要は、建田さんが何らかの理由で、葬儀出席をボイコットする状況を作り出すんだ

まあ、具体的には怒らせればいいだろう

手っ取り早いのは、葬儀主催者として”こっちサイド”が式次第全部、事前に段取りしちしまう

何の相談もせず…

どうせ相和会内部はもとより、業界内じゃあ、この後の2代目争いは矢島×建田のライバル対決と先刻承知なんだからな

これほど分かりやすい構図はないさ

然るべき対象者にはまず挑発する

そのリアクションで次なる材料となすんだ

先方の出方次第で何でもアリってヤツさ

そこで重要なのは、明石田の叔父貴へのアプローチになる

...


当然、前もってそれなりのシグナルを送るが、その際は何と言っても、こちらの望むアクションに出てくれるようにだ

ふふっ、叔父貴はそういった類のシグナルの読みこなしでは、実に長けた人だ

発信者側の主旨は的確に捉えてくれる

こっちの発信を間違えなければ大丈夫だ

その為には少しハデにぶち上げた方がいいな

叔父貴は建田さんのバックについているというスタンスで見られていても、”そこ”を超えたところで俺たちと同じ未来に視線を定めてくれてる

こっちの強みはそれを承知してるってことだ

当面、叔父貴とは暗黙でやれる

そして”例の時期”に直結するレールを引いていくぞ

...


よし、骨格は固まったんだ

さっそく”衣”をつけて行く…

俺は今日、数十年後に我々が到達する姿への遠大な旅路の一歩を踏みだした

間違いなくその一歩を…





< 52 / 221 >

この作品をシェア

pagetop