ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
病室にて/その3
ケイコ


「ケイコちゃん、一応、2週間後、そんな目安だ、君は一般弔問で参列して欲しいとのことだから。今から含んどいてくれるかな」

「了解しました。麻衣も承知なんですよね?」

「ああ、さっき麻衣さんには親族側でってことで、心つもり頼んどいたよ」

「麻衣は何て言ってました?」

「麻衣さん、”そんな簡単に棺桶入んないよ、あの人。聞かなかったことにする”って、ニヤニヤしながら言ってたよ。やっぱり、血筋だよなぁ。狂気で渡り歩いてきたうちの親分とはさ」

私、言い知れぬジェラシー感じてる気がした

とにかく、私は麻衣の噛ませ犬じゃない!

そう自分に言い聞かせていた

でも…

会長との約束にかこつけて、さっさと一抜けた考えてる、自分、ハンパなんじゃないかって、結局…

麻衣はとことん突っ走るつもりなのに

私、ちょっと、顔洗って、頭整理しなきゃダメだ

自分にしっかり向きわないと

どういう選択にしても…

中途半端で、適当に言い訳作って逃げてるだけかも

そんな嫌悪感が心にいっぱいだった

ある意味ではリスペクトしてやまない、相馬さんとの今生の別なのに

ちっぽけな感情でうだうだだわ、私


...



病院出る間際、時計を見ると、2時を回っていた

いけねー、薫たちが家来る時間だ

私は、病院の入り口付近にある公衆電話から、自宅に電話した

「あ、美咲?もうすぐ、薫と絵美がくる時間なんだけど、ちょっと遅れそうなんだ。二人が来たら待たせといてくれるか?」

「わかったよ。お姉ちゃん、庭でジョンと相手しとくよ」

「うん、頼むわ。お母さんにも、心配しないようにフォローしといてくれ」

「オッケー、任せて」

美咲が電話に出てよかった

オカンだと、またロクでもない連中とばかりなんとかかんとかって、うっせーから…

電話を切った後、小走りして病院の外に出た

正面脇には黒塗りの車が待機だ

私はその黒塗りの前に走って行った

車から私に気づいたドライバーの能勢さんが車外に出て、後部座席のドアを開けてくれる

はたから見れば、エスコートだ

病院に来た通りがかりの20代の女性は、そんな私を怪我んな視線で見つめていた

なんか、どうなんだろう…

私の今の振る舞いとか立場とか、これからとか…

今日は気分がダメ、ホント

早く家に帰って、中学時代の薫と絵美に会おう

気分転換だ、今、私に必要なのは

今さっきまで感じてた、初夏の猛烈な暑さは、黒塗の車内には全く無縁だった





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