ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
アキラが授かったロック界の大御所からの言葉②




「建田さんがココをライブハウスにした目的は知っていた。だが、それをバックグラウンドとして、この小屋自体がロックスピリットを宿したようだな」


「…」


(この後、石田さんはソファから立ち上がり、窓に向かって立って話をする。こっちには背を向けた格好だ。ちなみに、この人の視界は、窓の向こう側に隣接するK地区地上げ事業の立退き民家が占領しているはずだ)


「…建田さんはそのスジってことで、ここでステージに立つバンドを呼べないと悟り、自前の専属バンド誕生を考えた。自前バンド、ロード・ローラーズ結成のメンバー募集は、世のバンドブームもあって、えらい倍率となる大人数が集まったよな」



(今では伝説となってるローラーズ公募か…)



...



「…オレは人を通じて選考者になってな…。赤子ちゃん達の初代メンバーを採用した。まあ、自分で言うのも何だが、ローラーズ生みの親って訳だ」


「…」


「…建田さんからしたら、要は轟音でバンバン演奏させて周辺の立ち退きを促す手段にすぎなかったんだろうが、素人バンド5人は、その特異な自己表現のかなう環境下で、いきなり水を得た魚になれた。こういったプロセスは、俺なんかでも極めてレアなケースと捉えているよ。その結果、内包していたエネルギーを一挙に解放できた訳だ」


(これもコテコテの伝説だ…。間違いなく…)






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