ヒートフルーツ【特別編集版第１部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

それぞれの思惑/その３
建田（たてだ）


矢島は、オレがおやじの葬儀にボイコットだと騒いでるらしい

アホか、あの相馬豹一が葬儀の出る出ない程度でモノ言うかよ

相和会は東西どちらの全国組織にも組み込まれなかった

これがどんな意味を持つのか

矢島よ、知らんはずないだろ！

おやじは何回死んでもおかしくないくらい、ソレを拒み続けた

あのおやじの狂気に、全国組織はたじろいだもんだ

結局、奴らに最後の一歩までは踏み込ませなかった

そのおかげで、俺とお前は自由に、好き勝手に動けた訳だ

東京と関西の傘下じゃ、こうはいかなかったぜ


...




そのうち、この国の高度成長期の波に乗ってな

武闘派のお前と、経済派のオレが”独立系”の頂点に立たせた

県警も喜んでたしな、全国組織に屈しない唯一の組だってな

変なもんだ。そんなもんで、警察の内部じゃ鼻が高いとさ

まあ、こっちには都合がよかった

何かと監視が甘くなってな


...



とにかく、おやじはこの夏、逝った

若が”ああいうこと”になった限りは、オレかお前かだ

剣崎が何かと細かい動きしてるようだな

今日もおやじの遠縁の娘に、あんな”令状”持たせやがって

そんなもんで、頭に血が上るおれじゃねえぜ

こっちはたんまりため込んでるんだ

これがあるからには、”分”はこっちだぜ

お前らもそれを十分、承知してるんだろう？

これからの世の中、金だ、すべてな！

フン、こっちは叔父貴も取り込んである

この夏が終わるまでには決着つけてやるぜ