ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
かく絵図は描かれた/剣崎
その1
その日…、本宮法律事務所を出たのは夕方近かった。
約2時間、相和会の顧問弁護士ではない法律の専門家には、俺の手中にあるあるネタを吟味してもらい、結果、こちらの思惑通りで行けるとの結論をもらった
よし、この足で矢島さんに持ち込もう
で…、今日の内にあの人の決断を得る
ふふ…、相和会跡目をめぐる俺の描く絵は正気の沙汰じゃない
ある程度の下話はしてあるが、矢島さんが腹を括ってくれるかどうか…
ここは俺にとっても正念場だ
・・・
矢島さんの自宅であるマンションのリビングで、俺たち二人はソファテーブルに向き合って、まずは約30分かけて俺の描いた絵を説明した
手にしたロックのウィスキーグラスを時々口にしながら、サングラスをかけた矢島さんはほぼ無表情だった
「…剣崎よう、相馬豹一の相和会は極道界の常識をぶっ壊し続けていた。そのオヤジが死んじまって、次を獲り合う指示が記としては面白れえよ、そりゃ。本宮先生も建田の豚箱入りは大丈夫と言ってくれたんだ。だがよう…、当事者の俺からしたら、まさに博打だぜ。しくじれば一完の終わりだ。端的に聞くぜ。お前、このネタだけで自信あんのか?」
矢島さんは予想外に冷静な口調で、まずはストレートにこう尋ねてきたよ
ばらば、俺としても直球でリターンしよう
「正直、これ一手では不十分でしょう。何しろ、一度二代目の椅子に就かせてその後、クーデターまがいに跡目から引きずり下ろすんです。そうとなれば、あと矢は二本欲しい…。それが本音です」
「ならよう、剣崎…、”それ”が整わなけりゃこの絵図に着手はできねえ。そうなるだろ。まあ、お前のことだ。脱税容疑に持っていく組の掠め以外にも、ネタの用意は目途ついてるんだろうが…。どうなんだ?」
矢島さんは矢継ぎ早だった
「あくまで攻めの核は掠めで組み立てます。要はそれに加えた合わせ技、ダメ押しって形を描いてます。一つは北原が関西へ売りを持ちかけて事案が使えそうなんです。この件は、組への背任行為ってことで糾弾できると見込んでいます」
「ああ、北原は”それ”、あると見ていたが…。でもよう、尻尾つかめてるのか?しっかりとよう」
北原が関西の某有力組織、それもトップに近い幹部と癒着レベルの関係に至っていたらしいというのは矢島さんと以前から共有していた認識だが、今回、ヤツの女好きを突いて一定ラインの実証を掴んだんだ
矢島さんもその気配は感じ取っていたのだろう
一旦跡目に就いた建田さんを失脚させる際、業界向けには格好の題材だということは言うまでもないので、俺の胸の内は簡単に読まれていたわ
・・・
「…なるほどな。北原のヤロウ…、女が絡むと脇が甘くなるからな。いい目の付け所だったじゃねーか。関西のあっちも北原クラスと一定ライン以上の関係を構築できれば、どんな新体制になろうが今後の相和会にはくさびが打ち込めるって訳だしなあ(薄笑)。建田を追い落とすのに、組内部と対業界では格好のネタだわな。だがよう、お前的にももう一ネタ、ダメ押しが必要ってことだ。さて…、その3本目の矢ってことになるが…」
そうさ、矢島さんの指摘通りさ
二代目に祭り上げた後すぐに追い落としをかけるための、とどめとなるラストダーツ…、それはある意味、二本の矢を超えるインパクトと爆発力が求められる
それをどうやらゲットできそうな展開になってきた
ふふ…、建田さんを葬り、矢島さんを次のトップに就かせるための決定打を、まさか麻衣が提供してくれることになるとはな
さしたる期待は寄せていなかったが、麻衣のヤツ、やってくれたわ
まあ、ヤツの持ち込んだネタとその運用提案は完全に劇薬ではある
要するに、一歩間違えば、我々は破滅するハイリスクを背負った戦略になる
だが、もうここまで来たらこれしかない
伊豆の叔父貴、明石田さんをこっちに取り込むことも含め、極めて難易度の高いオペレーションという覚悟は必須となる
さあ、まずは矢島さんを説得できるかだ
俺はあらん限りの熱意を以って、長きに渡る兄貴分に麻衣の提案をぶつけた…
その1
その日…、本宮法律事務所を出たのは夕方近かった。
約2時間、相和会の顧問弁護士ではない法律の専門家には、俺の手中にあるあるネタを吟味してもらい、結果、こちらの思惑通りで行けるとの結論をもらった
よし、この足で矢島さんに持ち込もう
で…、今日の内にあの人の決断を得る
ふふ…、相和会跡目をめぐる俺の描く絵は正気の沙汰じゃない
ある程度の下話はしてあるが、矢島さんが腹を括ってくれるかどうか…
ここは俺にとっても正念場だ
・・・
矢島さんの自宅であるマンションのリビングで、俺たち二人はソファテーブルに向き合って、まずは約30分かけて俺の描いた絵を説明した
手にしたロックのウィスキーグラスを時々口にしながら、サングラスをかけた矢島さんはほぼ無表情だった
「…剣崎よう、相馬豹一の相和会は極道界の常識をぶっ壊し続けていた。そのオヤジが死んじまって、次を獲り合う指示が記としては面白れえよ、そりゃ。本宮先生も建田の豚箱入りは大丈夫と言ってくれたんだ。だがよう…、当事者の俺からしたら、まさに博打だぜ。しくじれば一完の終わりだ。端的に聞くぜ。お前、このネタだけで自信あんのか?」
矢島さんは予想外に冷静な口調で、まずはストレートにこう尋ねてきたよ
ばらば、俺としても直球でリターンしよう
「正直、これ一手では不十分でしょう。何しろ、一度二代目の椅子に就かせてその後、クーデターまがいに跡目から引きずり下ろすんです。そうとなれば、あと矢は二本欲しい…。それが本音です」
「ならよう、剣崎…、”それ”が整わなけりゃこの絵図に着手はできねえ。そうなるだろ。まあ、お前のことだ。脱税容疑に持っていく組の掠め以外にも、ネタの用意は目途ついてるんだろうが…。どうなんだ?」
矢島さんは矢継ぎ早だった
「あくまで攻めの核は掠めで組み立てます。要はそれに加えた合わせ技、ダメ押しって形を描いてます。一つは北原が関西へ売りを持ちかけて事案が使えそうなんです。この件は、組への背任行為ってことで糾弾できると見込んでいます」
「ああ、北原は”それ”、あると見ていたが…。でもよう、尻尾つかめてるのか?しっかりとよう」
北原が関西の某有力組織、それもトップに近い幹部と癒着レベルの関係に至っていたらしいというのは矢島さんと以前から共有していた認識だが、今回、ヤツの女好きを突いて一定ラインの実証を掴んだんだ
矢島さんもその気配は感じ取っていたのだろう
一旦跡目に就いた建田さんを失脚させる際、業界向けには格好の題材だということは言うまでもないので、俺の胸の内は簡単に読まれていたわ
・・・
「…なるほどな。北原のヤロウ…、女が絡むと脇が甘くなるからな。いい目の付け所だったじゃねーか。関西のあっちも北原クラスと一定ライン以上の関係を構築できれば、どんな新体制になろうが今後の相和会にはくさびが打ち込めるって訳だしなあ(薄笑)。建田を追い落とすのに、組内部と対業界では格好のネタだわな。だがよう、お前的にももう一ネタ、ダメ押しが必要ってことだ。さて…、その3本目の矢ってことになるが…」
そうさ、矢島さんの指摘通りさ
二代目に祭り上げた後すぐに追い落としをかけるための、とどめとなるラストダーツ…、それはある意味、二本の矢を超えるインパクトと爆発力が求められる
それをどうやらゲットできそうな展開になってきた
ふふ…、建田さんを葬り、矢島さんを次のトップに就かせるための決定打を、まさか麻衣が提供してくれることになるとはな
さしたる期待は寄せていなかったが、麻衣のヤツ、やってくれたわ
まあ、ヤツの持ち込んだネタとその運用提案は完全に劇薬ではある
要するに、一歩間違えば、我々は破滅するハイリスクを背負った戦略になる
だが、もうここまで来たらこれしかない
伊豆の叔父貴、明石田さんをこっちに取り込むことも含め、極めて難易度の高いオペレーションという覚悟は必須となる
さあ、まずは矢島さんを説得できるかだ
俺はあらん限りの熱意を以って、長きに渡る兄貴分に麻衣の提案をぶつけた…