ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
男たちのオセロゲーム/その4
剣崎


さすがに今日の幹部総会はしんどかった

矢島さんが最後までこらえてくれるかと懸念していたが…

何しろ、相和会設立当時からのライバルに屈したことになるのだ

いくら表向きとはいえ…

矢島さんの心中を察すると俺も正直、つらい

とにかく、今日、相和会2代目会長は建田さんに決まった

俺は相馬会長亡き後のふさわしい後継者は、矢島さんしかいないと信じている

その為に、俺は4年間も本家付きで会長のそばに仕えたようなもんだ

それこそ24時間、365日体制でな

俺の力が足りなかったせいで、矢島さんをダイレクトには2代目にできなかった

これは純然たる事実だ

しかし、窮余の策を俺は選択したんだ

皮をきらせ肉を切らせて、骨を切る…、それしかない

これが唯一の”目的”達成の手だと腹を括ったよ

...


建田さんの稼ぐ能力と実績は文句なく凄い

それは100%認める

相和会に入る金の大半は建田組のアガリだった

それは長い間ずっとだった

だが、それのかなりを自分の組に留めておいたはずだと、俺は睨んでいた

我々の”オヤジ”は、この世界じゃ、まずありえないくらい金に執着がない人だったからな

それ故、稼ぎ頭の建田さんが”いいようにできた”、ということはあるとな

他方で、その間、全国組織に屈しない姿勢を徹底できたのは、まさに我々武闘派が体を張ってきたからだ

その先頭に立っていたのは、常に矢島さんだった

矢島さんからすれば、血を流したことのない建田さんなど、極道と認めていない

半面、”広域”に対抗するには強大な”経済力”は必須だった

当然のことながらだが…

両雄、並び立たずとはよく言ったもんだぜ

...


はっきり言って、相馬豹一は東西、いずれの広域組織も恐れる存在だった

だが、組のことは全くと言っていいほど頓着なかったのだ

ある意味、そこが連中からすれば一番恐ろしかったのかも知れないが

俺は本家住みとして会長のそばにいた間、この人の”狂気”の本当のところは、なんだったのか、わずかながら知った

それは、去年の春、あの本郷麻衣の後ろ盾となった時、はっきりした

今から思えば、この時点でようやく”本質”を目の当たりにできたのだ






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