ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
男たちのオセロゲーム/その5
剣崎
若が“ああいうコト”で亡くなって、2代目後継の暗闘は事実上始まったと言える
相馬会長は、従来から若を自分の後継ぎにすると、みんなに公言していた
だが、それは息子に代を継がせて自分や身内の安泰を計るという、世間一般の認識とは違う
若ははっきり言って、相和会のトップどころが、とても人の上に納まる器ではなかった
これは組の内外、共通の認識だったよ
そもそも、若こと、相馬定男は頭がちょっと足りない
勿論、会長はそのことを百も承知だったさ
では何故かと言えば、それは単純な訳で、会長はよく言ってたよ、みんなの前で…
「定男が2代目となれば、お前ら、大変な苦労するのは目に見えてる。面白いじゃないか。気狂いの俺を長年、”担いだ”お前らだ…。あの出来損ないをどんなふうに支えるのか、興味があるんでな。だから、あのバカが”後継”なんだ…、ハハハ…」
会長が恐ろしい人だというのは、こういうコトなんだろう
...
相和会を傘下にしたい広域組織にとっては、初代会長が死んだ時、それはまさに好機到来だ
絶対に見逃すはずはない
だが、あの相馬豹一、その人が生前かねてから、万人が認める”バカ息子”を後継と正式に指名しているのだ
対峙する組織などからすれば、あえて”バカ殿”を選択したのは一計ありと考えても無理はない
残った幹部連中は、それこそ必死になって支える、それを見越してのことだろうと…
相和会は矢島、建田の両派が長く対立の構図にあることは、この業界の誰もが知っている
だから、むしろアタマはバカの方が、みんな、組の存続の為に団結する
どちらかが立てば、組が割れるか全国組織に喰われる
それを阻止する意図があってのことだと…
要は、そういう”読み”が成立するというものだ
...
従って、”連中”は、かえってうかつに動かないだろう
これが通常の見方になるよ
ところが、ウチの会長は伝説の狂気でのし歩いてきた人だ
ここに、”ダブルミーニング”が生まれるんだ、いつものことだが
相馬会長はバカ息子を2代目に据えて、本気で自分の組を潰すつもりしかも知れない…
そのくらいのことは考える人だ、何しろほかの人間が思いもよらないとんでもないことやってきた男だ…
やはり恐ろしい男だ…、という解釈が成立しちまう
俺たち相和会内部のモンも、正直言ってそのどっちかわからいくらいなのだから…
もっとも、この”既定路線”を相和会内部は、了としていた
とにかく、バカ殿がいずれ2代目ということを前提に、ずっと組がまとまってこれたんだ
...
しかし、その”バカ殿”は、ケツの青い小娘に”間接的”に死に追いやられた
ある日突然…
そして会長は、常人の想像を超えた狂気を孕んだ”ボール”を、今度はその”小娘”に投げつけることになる…
剣崎
若が“ああいうコト”で亡くなって、2代目後継の暗闘は事実上始まったと言える
相馬会長は、従来から若を自分の後継ぎにすると、みんなに公言していた
だが、それは息子に代を継がせて自分や身内の安泰を計るという、世間一般の認識とは違う
若ははっきり言って、相和会のトップどころが、とても人の上に納まる器ではなかった
これは組の内外、共通の認識だったよ
そもそも、若こと、相馬定男は頭がちょっと足りない
勿論、会長はそのことを百も承知だったさ
では何故かと言えば、それは単純な訳で、会長はよく言ってたよ、みんなの前で…
「定男が2代目となれば、お前ら、大変な苦労するのは目に見えてる。面白いじゃないか。気狂いの俺を長年、”担いだ”お前らだ…。あの出来損ないをどんなふうに支えるのか、興味があるんでな。だから、あのバカが”後継”なんだ…、ハハハ…」
会長が恐ろしい人だというのは、こういうコトなんだろう
...
相和会を傘下にしたい広域組織にとっては、初代会長が死んだ時、それはまさに好機到来だ
絶対に見逃すはずはない
だが、あの相馬豹一、その人が生前かねてから、万人が認める”バカ息子”を後継と正式に指名しているのだ
対峙する組織などからすれば、あえて”バカ殿”を選択したのは一計ありと考えても無理はない
残った幹部連中は、それこそ必死になって支える、それを見越してのことだろうと…
相和会は矢島、建田の両派が長く対立の構図にあることは、この業界の誰もが知っている
だから、むしろアタマはバカの方が、みんな、組の存続の為に団結する
どちらかが立てば、組が割れるか全国組織に喰われる
それを阻止する意図があってのことだと…
要は、そういう”読み”が成立するというものだ
...
従って、”連中”は、かえってうかつに動かないだろう
これが通常の見方になるよ
ところが、ウチの会長は伝説の狂気でのし歩いてきた人だ
ここに、”ダブルミーニング”が生まれるんだ、いつものことだが
相馬会長はバカ息子を2代目に据えて、本気で自分の組を潰すつもりしかも知れない…
そのくらいのことは考える人だ、何しろほかの人間が思いもよらないとんでもないことやってきた男だ…
やはり恐ろしい男だ…、という解釈が成立しちまう
俺たち相和会内部のモンも、正直言ってそのどっちかわからいくらいなのだから…
もっとも、この”既定路線”を相和会内部は、了としていた
とにかく、バカ殿がいずれ2代目ということを前提に、ずっと組がまとまってこれたんだ
...
しかし、その”バカ殿”は、ケツの青い小娘に”間接的”に死に追いやられた
ある日突然…
そして会長は、常人の想像を超えた狂気を孕んだ”ボール”を、今度はその”小娘”に投げつけることになる…