あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
「あらぁ、ウリヤナ。悔しいのかしらぁ? 悔しいのならぁ、泣いてもよろしくてよ?」
クロヴィスの腕に自身の腕を絡ませたコリーンは、彼に身を寄せる。ドレスの胸元から見え隠れする谷間を、彼の腕に押し付けているようにも見えた。
「いいえ……」
悔しくはない。クロヴィスとのことはもういい。彼が他の女性を侍らせるようになった一年前から、彼の心は離れていたのだ。それを無理矢理つなぎ止めようとした、自分の浅はかな行為を恥じているだけである。
「このたびは、おめでとうございます」
鼻の奥がひりひりと痛む中、コリーンに向かって祝いの言葉をかけた。
「ありがとう」
どことなく婀娜っぽい笑みにも見えた。こんなコリーンをウリヤナは知らない。
「ふぅん。こう見ると、あなたはなんだって間抜けな顔をしているのねぇ」
「聖なる力がなければ、彼女は地味な女だからな。聖女と呼ばれて、有頂天にでもなっていたのだろう? だから力を失った途端、このざまだ」
ウリヤナは膝の上に置いた手をきゅっと握りしめた。
「そうよねぇ。聖女になった途端、人を見下すような態度をとっていた罰ではないのかしらぁ? 力を失うだなんて……いい気味だわぁ」
奥歯を噛みしめながらも、絶対に二人から目を逸らさなかった。ここまで言われなければならない理由はわからない。
< 10 / 62 >

この作品をシェア

pagetop