あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
ウリヤナは聖女として神殿で祈りを捧げ、この国を平穏に導いているつもりだった。
聖女の癒しの力は、何も人間にだけ効果があるものではない。土壌だったり気候だったり。作物が豊かに実るのも、必要なときに雨が降り太陽が煌々と輝くのも、聖女の力の一つとも言われているのだ。それによって、人々は飢えと渇きという苦しみから解放される。
「ねえ、ウリヤナ。教えてあげるわぁ」
右手の人さし指を、唇の前に立てる仕草がわざとらしい。
「私もねぇ。聖なる力が目覚めたのぉ。だから、ヴィーと婚約する資格を得たのよぉ」
婚約する資格だけでなく、彼を愛称で呼ぶ資格も得たようだ。ウリヤナは口を閉ざしたまま、彼らの話を聞き流す。
聖なる力は何がきっかけで現れるかがわからない。そして、何がきっかけとなって失うのかもわからない。
「でもぉ。わかったのが遅かったじゃない? だからぁ、神殿には入らないでねぇ?」
そもそも聖なる力が出現したのに、神殿の管理下に置かれないことが特例だ。その特例を作ったというのであれば、神殿よりも強い力が働いたということになる。つまり王族の力。もしくは金の力。
どちらもウリヤナにはなかったものだ。
「あ、でもぉ。ウリヤナは力を失ったのよねぇ? となれば、神殿からも追い出されてしまうのかしら? あらぁ、かわいそう。もちろん、カール子爵家には戻れないわよねぇ。婚約も解消されて、聖女ではなくなったからだなんてぇ。恥ずかしくて、両親に合わせる顔がないでしょう?」
聖女の癒しの力は、何も人間にだけ効果があるものではない。土壌だったり気候だったり。作物が豊かに実るのも、必要なときに雨が降り太陽が煌々と輝くのも、聖女の力の一つとも言われているのだ。それによって、人々は飢えと渇きという苦しみから解放される。
「ねえ、ウリヤナ。教えてあげるわぁ」
右手の人さし指を、唇の前に立てる仕草がわざとらしい。
「私もねぇ。聖なる力が目覚めたのぉ。だから、ヴィーと婚約する資格を得たのよぉ」
婚約する資格だけでなく、彼を愛称で呼ぶ資格も得たようだ。ウリヤナは口を閉ざしたまま、彼らの話を聞き流す。
聖なる力は何がきっかけで現れるかがわからない。そして、何がきっかけとなって失うのかもわからない。
「でもぉ。わかったのが遅かったじゃない? だからぁ、神殿には入らないでねぇ?」
そもそも聖なる力が出現したのに、神殿の管理下に置かれないことが特例だ。その特例を作ったというのであれば、神殿よりも強い力が働いたということになる。つまり王族の力。もしくは金の力。
どちらもウリヤナにはなかったものだ。
「あ、でもぉ。ウリヤナは力を失ったのよねぇ? となれば、神殿からも追い出されてしまうのかしら? あらぁ、かわいそう。もちろん、カール子爵家には戻れないわよねぇ。婚約も解消されて、聖女ではなくなったからだなんてぇ。恥ずかしくて、両親に合わせる顔がないでしょう?」