あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
「私たちは、いつでもウリヤナ様が戻ってこられるのをお待ちしております。ウリヤナ様のおかげで私たちは……」
言葉の先は嗚咽に飲み込まれる。彼女の目からはぼたぼたと涙が溢れていた。
「ありがとう。あなたのその言葉だけで充分だわ」
ウリヤナの我儘でソクーレに向かうのに、神殿で働いている御者の男も乗り合い馬車乗り場までウリヤナを連れていってくれると言う。
力を失った自分に対して彼らがここまで気にかけてくれているとは思ってもいなかった。コリーンの言葉通り、追い出されるものと思っていたからだ。
それでも彼らの言葉に甘えてはならない。この場にとどまれば、両親や弟にも迷惑をかけてしまうだろう。
両親はウリヤナが神殿で生活するのをよしとはしなかった。自分たちに金さえあればと何度も悔やんでいた。家族だからと彼らは言ったが、ウリヤナも家族だからこそ両親と弟には苦労のない生活を送って欲しいと思ったのだ。
クロヴィスとの婚約の話があがったときも、父親だけは身分不相応だと口にした。だが、そんな理由で婚約の話が立ち消えになるわけではない。むしろ聖女となってしまった彼女にとって、クロヴィスの婚約者として相応しい身分を手にいれてしまったのだ。
「ウリヤナ様。私はここまでしかご一緒できません」
王都の南の外れにある、馬車乗り場。ここには各方面へと向かう乗り合い馬車が集まっている場所でもある。
言葉の先は嗚咽に飲み込まれる。彼女の目からはぼたぼたと涙が溢れていた。
「ありがとう。あなたのその言葉だけで充分だわ」
ウリヤナの我儘でソクーレに向かうのに、神殿で働いている御者の男も乗り合い馬車乗り場までウリヤナを連れていってくれると言う。
力を失った自分に対して彼らがここまで気にかけてくれているとは思ってもいなかった。コリーンの言葉通り、追い出されるものと思っていたからだ。
それでも彼らの言葉に甘えてはならない。この場にとどまれば、両親や弟にも迷惑をかけてしまうだろう。
両親はウリヤナが神殿で生活するのをよしとはしなかった。自分たちに金さえあればと何度も悔やんでいた。家族だからと彼らは言ったが、ウリヤナも家族だからこそ両親と弟には苦労のない生活を送って欲しいと思ったのだ。
クロヴィスとの婚約の話があがったときも、父親だけは身分不相応だと口にした。だが、そんな理由で婚約の話が立ち消えになるわけではない。むしろ聖女となってしまった彼女にとって、クロヴィスの婚約者として相応しい身分を手にいれてしまったのだ。
「ウリヤナ様。私はここまでしかご一緒できません」
王都の南の外れにある、馬車乗り場。ここには各方面へと向かう乗り合い馬車が集まっている場所でもある。