あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
「ウリヤナ様。乗り合い馬車はいろいろな方が利用されます。けして気を抜かぬよう、お願いします。ましてウリヤナ様は」
御者はウリヤナの手を両手で握りしめた。まるで、子どもの門出を心配するような親にも見えなくはない。その微妙な気持ちが、恥ずかしくもあり嬉しくもある。
「カール子爵家には、神官長のほうからそれとなく伝えてくれるそうです」
「ありがとう。あなたにも迷惑をかけたわね」
ウリヤナの言葉に御者はぶんぶんと首を横に振る。
「ウリヤナ様が神殿に来られたのは、ウリヤナ様の意思ではないかもしれませんが。それでも私たちにとっては、喜ばしいことであったのです」
「そうね」
――神殿で生活をし、聖なる力を高めろ。
ウリヤナが国王からかけられた言葉である。
そこに金がちらついていたのも事実である。ただでさえ、あの時期は火の車の状態であったカール子爵家は、王命に背いたらあっという間に取り潰されてしまっただろう。渋る父親を宥めたのもウリヤナで、国王に交換条件を出したのもウリヤナだった。
聖女を輩出した家には褒賞金を――。
聖女となってしまったため、これからの人生はウリヤナのものではなく、聖女のものとなり国のものとなるのだ。今後のウリヤナの生活を王族によって勝手に決められてしまったのだから、金くらい望んでも罰は当たらないだろう。
御者はウリヤナの手を両手で握りしめた。まるで、子どもの門出を心配するような親にも見えなくはない。その微妙な気持ちが、恥ずかしくもあり嬉しくもある。
「カール子爵家には、神官長のほうからそれとなく伝えてくれるそうです」
「ありがとう。あなたにも迷惑をかけたわね」
ウリヤナの言葉に御者はぶんぶんと首を横に振る。
「ウリヤナ様が神殿に来られたのは、ウリヤナ様の意思ではないかもしれませんが。それでも私たちにとっては、喜ばしいことであったのです」
「そうね」
――神殿で生活をし、聖なる力を高めろ。
ウリヤナが国王からかけられた言葉である。
そこに金がちらついていたのも事実である。ただでさえ、あの時期は火の車の状態であったカール子爵家は、王命に背いたらあっという間に取り潰されてしまっただろう。渋る父親を宥めたのもウリヤナで、国王に交換条件を出したのもウリヤナだった。
聖女を輩出した家には褒賞金を――。
聖女となってしまったため、これからの人生はウリヤナのものではなく、聖女のものとなり国のものとなるのだ。今後のウリヤナの生活を王族によって勝手に決められてしまったのだから、金くらい望んでも罰は当たらないだろう。