あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
ウリヤナが聖女となり神殿で生活をし始めた途端、カール子爵家の懐は潤った。それでも彼らの生活は質素であり、民のためにと奔走している。
そのような場所にウリヤナが戻ったとしたら、また彼らは胸を痛めるにちがいない。
そんなウリヤナは、婚約解消時にクロヴィスに一つだけ約束を取り付けていた。今まで王家がカール子爵家に支払った褒賞金などの返還を求めないようにするものだ。
だから、きっと大丈夫。
ウリヤナは自分にそう言い聞かせて、北に向かう乗り合い馬車へと乗り込んだ。
乗り合い馬車には、母子と思われる女性と幼い男の子、商人風の格好をしたでっぷりとした男性が一人乗っていた。どこに座ろうかと考え、やはり同じ女性のほうが安心するのもあって、彼女たちに近いほうの席を選んだ。
すると男の子がウリヤナに気づきニコリと微笑む。
男の子は母親の服の裾を引っ張り、何かを話しかけている。女性も顔をあげ、ウリヤナに視線を向けると頭を下げた。ウリヤナも同じように頭を下げる。
たったそれだけの仕草であるのに、急に親しみを感じた。
はぁと、深いため息が聞こえた。
これの主はもう一人の男性だろう。嫌なヤツらと一緒になってしまったと、無言で訴えているに違いない。ウリヤナは座席に深く座り直すと、荷物を両腕に抱え込んで目を閉じた。
力を失ったウリヤナが北のソクーレまで移動することを、神殿にいる者たちは非常に心配した。理由は一つ。聖なる力もなく魔力もないからだ。
そのような場所にウリヤナが戻ったとしたら、また彼らは胸を痛めるにちがいない。
そんなウリヤナは、婚約解消時にクロヴィスに一つだけ約束を取り付けていた。今まで王家がカール子爵家に支払った褒賞金などの返還を求めないようにするものだ。
だから、きっと大丈夫。
ウリヤナは自分にそう言い聞かせて、北に向かう乗り合い馬車へと乗り込んだ。
乗り合い馬車には、母子と思われる女性と幼い男の子、商人風の格好をしたでっぷりとした男性が一人乗っていた。どこに座ろうかと考え、やはり同じ女性のほうが安心するのもあって、彼女たちに近いほうの席を選んだ。
すると男の子がウリヤナに気づきニコリと微笑む。
男の子は母親の服の裾を引っ張り、何かを話しかけている。女性も顔をあげ、ウリヤナに視線を向けると頭を下げた。ウリヤナも同じように頭を下げる。
たったそれだけの仕草であるのに、急に親しみを感じた。
はぁと、深いため息が聞こえた。
これの主はもう一人の男性だろう。嫌なヤツらと一緒になってしまったと、無言で訴えているに違いない。ウリヤナは座席に深く座り直すと、荷物を両腕に抱え込んで目を閉じた。
力を失ったウリヤナが北のソクーレまで移動することを、神殿にいる者たちは非常に心配した。理由は一つ。聖なる力もなく魔力もないからだ。