あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
しばらくそうやってうろうろとしていると、ウリヤナの声とは違う声が聞こえてきた。
『……んぎゃ……ん、ぎゃぁああ……』
確かめなくてもわかる。これは赤ん坊の泣き声である。
「ウリヤナ」
ばん!と乱暴に扉を開けて室内に入ると、産婆の腕の中にいる赤ん坊は真っ赤な顔をして泣いていた。
「旦那様、男の子ですよ。おめでとうございます」
まだ何も身に纏っていない赤ん坊の肌も真っ赤だった。すべてが真っ赤である。
きっとこれが赤ん坊と呼ばれる由来なのだろう。
「ウリヤナ……大丈夫か?」
レナートはウリヤナの側に寄り添って彼女の顔を覗き込む。
「えぇ……なんとか。あなたのおかげね」
白いおくるみに包まれた赤ん坊が、ウリヤナの隣にやってきた。あれほど大きな声で泣いていた赤ん坊は、今では両手をぎゅっと握りしめてすやすやと眠っている。
「私は片づけをしてまいりますので。何かありましたら、すぐにお呼びください」
産婆はレナートにそう声をかけて部屋をでていった。それが彼女なりの気の遣い方なのだろう。
「レナート……ありがとう。私とこの子を受け入れてくれて……」
「言っただろう? 俺の国では血の繋がりよりも、魔力の繋がりを重視する。例えこの子が、俺の血を引いていないとしても、俺がずっと魔力を注ぎ続けていた。だから、この子は俺の子なんだ」
ウリヤナはぱっと碧眼を見開いたかと思うと、はらはらと涙をこぼした。
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