あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
「見栄を張っている」と口にする者もいたが、コリーンはそうは思わなかった。
白いドレスはウリヤナの母親のものだし、刺繍はきっとウリヤナ本人と母親の手によって作られたものだろう。宝石だって昔から用いているものに違いない。
一つ一つには金はかけられていないのに、それでも華やかに見えるのが不思議であった。
生活もけして楽ではないだろう。それなのに、幸せそうに父親と顔を毎わせて微笑んでいる姿に胸が痛んだ。
社交界デビューの日は、家名を呼ばれ国王との謁見から始まる。その後、別室に呼ばれて魔力鑑定を受ける。
『とても強い魔力を感じます。訓練をつめば国家魔術師も夢ではないようです』
コリーンは他の者よりも魔力が強いとのことだった。本人が望めば、魔術師としての訓練をつみ将来は国家魔術師としての道もある。だが、その道を進むためには魔力を高めなければならない。それに耐えられるかは本人の体力と気力によるものだ。
他人と違う能力があったことに、コリーンの心は大きく跳ねた。
国家魔術師――。選ばれし者の集団。ここに入ればコリーンの生活は一変する。ただ鍛錬は厳しいものと聞く。
『娘にそのような生活は求めません』
厳しい口調でそう告げたのは、コリーンの父親だった。
『そうですか。無理強いするものでもありませんので』
そのときの神官長は、とても寂しそうな顔をしていた気がする。
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