あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
「おじさん。ぼくの心の声が聞こえたの?」
「怪我は?」
レナートが尋ねると、男の子は首を横に振る。見たところ、両足でしっかりと立っており、意識もはっきりとしているようだ。
「おねえちゃんが」
「わかった。騎士団がくるまでできる限りのことはしよう」
男の子はレナートの上着の裾を引っ張った。こっちへ来い、と言っているのだろう。
宿の客と思われる人々は惚けており、うすら汚れた感じではあるが、大きな怪我を負っている者はいないように見えた。
「おねえちゃんが、ぼくを助けてくれた」
路地の一番奥に一人の女性が横たわっていた。その側では、別の女性が何か布地をあてがって止血をしている。
「おかあさん。おじさんが、おねえちゃんを助けてくれるって」
男の子に「おじさん」と呼ばれるたびにもやっとした気持ちが生まれるのだが、今はそれを気にしている場合ではない。
膝をつき、倒れている女性を確認する。
「彼女は?」
止血していた女性から布地を受け取り、傷口をきつく縛り上げる。そこに固定魔法をかけたので、しばらくすれば血も止まるだろう。怪我をすぐに治せるような魔法はない。それは『聖なる力』と呼ばれる領域だ。
「怪我は?」
レナートが尋ねると、男の子は首を横に振る。見たところ、両足でしっかりと立っており、意識もはっきりとしているようだ。
「おねえちゃんが」
「わかった。騎士団がくるまでできる限りのことはしよう」
男の子はレナートの上着の裾を引っ張った。こっちへ来い、と言っているのだろう。
宿の客と思われる人々は惚けており、うすら汚れた感じではあるが、大きな怪我を負っている者はいないように見えた。
「おねえちゃんが、ぼくを助けてくれた」
路地の一番奥に一人の女性が横たわっていた。その側では、別の女性が何か布地をあてがって止血をしている。
「おかあさん。おじさんが、おねえちゃんを助けてくれるって」
男の子に「おじさん」と呼ばれるたびにもやっとした気持ちが生まれるのだが、今はそれを気にしている場合ではない。
膝をつき、倒れている女性を確認する。
「彼女は?」
止血していた女性から布地を受け取り、傷口をきつく縛り上げる。そこに固定魔法をかけたので、しばらくすれば血も止まるだろう。怪我をすぐに治せるような魔法はない。それは『聖なる力』と呼ばれる領域だ。