あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
六、命を育む日
ウリヤナがローレムバ国にやってきてから五か月が経った。
日に日に膨らむお腹を穏やかな気持ちで見守っていられるのも隣にいるレナートのおかげだろう。
レナートはローレムバ国の魔術師でありながら、ザフロス辺境伯という立派な爵位を持っていたのだ。
「気分はどうだ?」
ゆったりとしたソファに深く座っているウリヤナを労わるかのように、隣から声をかける。 
「お腹の子の元気がよすぎて」
胎動も感じられるようになり、自分の意思とは異なる動きを見せているのが不思議だった。
「元気なもんだな」
彼は笑うと目が糸のように細くなる。
「俺の魔力を注ぎたいのだが、大丈夫か?」
「大丈夫よ。いつもありがとう」
「俺の子だからな。当たり前だ」
レナートの手がウリヤナの腹部に触れた。
彼が父親になりたいと口にしたときはもちろん驚いた。彼とはあのときに会ったばかりであったのに。もちろん彼とは血のつながりのない子になる。
その意味を問うたところ『俺の国では、血のつながりよりも魔力のつながりを重視する』とのこと。
胎児のうちに魔力を注ぐことで、その注いだ者の魔力に胎児が馴染むらしい。その結果、同じような魔力になるのだとか。
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