あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
胎児に魔力を注ぐという話を始めて聞いたウリヤナにはピンとこなかった。だがローレムバに来て、それがここでは当たり前だと知る。
特に今回は、レナートと胎児に血のつながりがない。となれば魔力が馴染むのに時間が必要となるため、妊娠初期から魔力を注ぐ必要があった。
あのときも、ウリヤナの妊娠がわかったばかりであったため、間に合うと彼は思ったらしい。
そういった彼の説明を聞き、そして彼という人物に興味を持ち、彼の提案を受け入れた。
マシューとナナミとソクーレの町で別れると、ウリヤナはレナートと彼の従者であるロイと関所を越えた。
不思議な縁である。
宿が炎に包まれたとき、マシューが心の中で助けを呼んでくれたおかげで、レナートと出会うことができた。ウリヤナが持っていた魔石のおかげだろうと、レナートは言っていた。
となればレナートと出会ったのは神官たちのおかげでもある。
ローレムバ国に入国する際に、ウリヤナとレナートが夫婦であったほうが手続きは楽ということもあり、二人はソクーレの町で婚姻の届を出した。レナートからの提案であったが、お腹の子の父親が彼であり母親がウリヤナというのであれば、夫婦という形であったほうがいいのかもしれない。ウリヤナは自然とそれを受け入れていた。
彼の領地は関所を越えてすぐだった。
大きくて立派な屋敷が見えてきたときはレナートとは何者だろうと思った。彼は肝心の身分を明かしていなかった。
< 46 / 62 >

この作品をシェア

pagetop