あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
一、婚約者と友を失った日
イングラム国は大陸の中心にあり、王都ネーウは国の中心部にある。
国境には関所が設けられ、国と国を行き来する物資や人を厳しく管理している。
王都の真ん中にある白亜の王城は、朝焼けを浴びる姿は神々しく一日の始まりに目にすれば心が弾むとさえ言われている。
王城の一室で、ウリヤナは目の前に座っている男をじっと見つめていた。
珍しい金色の瞳はイングラム国の王族の証である。瞳と同じような金色の髪は、彼が顔を傾けるたびにさらりと揺れる。
「クロヴィス殿下。今、なんておっしゃったのでしょうか?」
ぱっちりとした二重の碧眼を見開き、真っすぐに視線をぶつけた。
「私と君の婚約はなかったものとしたい」
勝ち誇ったかのような笑みを浮かべているクロヴィスに対して、ぷつっと殺意のようなものが芽生えた。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか? 私と殿下の婚約は、殿下側が望んでされたことですよね?」
「ああ、そうだ。君は聖女であって、聖なる力を持っていたからな。聖なる力を持つ女性は貴重な存在だ。そのような女性を野放しにしておくことなどできないだろう?」
彼女に『聖なる力』があるとわかったのは、デビュタントのために両親と王城を訪れたときである。
国王への挨拶が終わった彼女たちは、必ず神官による魔力鑑定を受ける。
誰でも持ち合わせている魔力であるが、魔力にも強さや種類があり相性がある。その強さと種類が落ち着くのが成人を迎える頃と言われており、このタイミングで魔力鑑定をされるのだ。
国境には関所が設けられ、国と国を行き来する物資や人を厳しく管理している。
王都の真ん中にある白亜の王城は、朝焼けを浴びる姿は神々しく一日の始まりに目にすれば心が弾むとさえ言われている。
王城の一室で、ウリヤナは目の前に座っている男をじっと見つめていた。
珍しい金色の瞳はイングラム国の王族の証である。瞳と同じような金色の髪は、彼が顔を傾けるたびにさらりと揺れる。
「クロヴィス殿下。今、なんておっしゃったのでしょうか?」
ぱっちりとした二重の碧眼を見開き、真っすぐに視線をぶつけた。
「私と君の婚約はなかったものとしたい」
勝ち誇ったかのような笑みを浮かべているクロヴィスに対して、ぷつっと殺意のようなものが芽生えた。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか? 私と殿下の婚約は、殿下側が望んでされたことですよね?」
「ああ、そうだ。君は聖女であって、聖なる力を持っていたからな。聖なる力を持つ女性は貴重な存在だ。そのような女性を野放しにしておくことなどできないだろう?」
彼女に『聖なる力』があるとわかったのは、デビュタントのために両親と王城を訪れたときである。
国王への挨拶が終わった彼女たちは、必ず神官による魔力鑑定を受ける。
誰でも持ち合わせている魔力であるが、魔力にも強さや種類があり相性がある。その強さと種類が落ち着くのが成人を迎える頃と言われており、このタイミングで魔力鑑定をされるのだ。