あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
七、招待を受けた日
イングラム国内は次第に荒れ始めていた。騎士団の目の届かないところでは暴動も起こっている。
食べ物が手に入りにくくなっているのが原因であった。
クロヴィスは頭を抱えていた。それもこれもすべてウリヤナがいなくなってからだ。
カール子爵を問い質したが、彼はウリヤナが聖女となってからは縁を切ったと口にする。彼女がどこにいるかはわからないとのこと。
彼女の居場所がわからないのであれば、脅しをかけることもできない。
会えないとわかれば会いたいという思いが募る。
クロヴィスはウリヤナを手放したいわけではなかった。ただ側にいて欲しかった。それすら彼女には伝わらなかったのだ。
「クソッ」
どん、と両手で机の上を叩くと、山のような書類が雪崩を起こす。嘆願書の山だ。
さすがにこの現状にはコリーンも焦り始めたらしい。聖女としてできることをすべきだと国王からも詰め寄られ、顔を真っ青にしていた。
あのとき彼女はわけのわからないことを口にしていた。
『ですが。力を使い過ぎれば力を失ってしまうのではないのですか? ウリヤナと同じように』
コリーンも父王も他に誰もいないと思ったのだろう。だが彼女を探していたクロヴィスはたまたまその二人の会話を耳にしてしまったのだ。
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