あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
聖なる力は使い過ぎれば失われてしまう――。
そのようなことをクロヴィスは知らなかった。つまりウリヤナが力を失ったのはクロヴィスのせいではなかったのだ。
むしろ神殿のせいだ。
彼らに気づかれぬように執務室に戻ったクロヴィスは、机の前に座って奥歯をギリギリと噛みしめていた。
「クロヴィス様、書簡が届いております」
そう言って部屋に入ってきたのはアルフィーだ。彼は以前と変わっていない。変わっていないのは、彼だけかもしれない。
「これは……。ローレムバ国から、か?」
以前、イングラム国の現状を助けてほしくて、魔術師の力を依頼したことがある。
あのときローレムバ国の属国となることを条件としてつきつけられ、少し考えさせてほしいと回答を保留にした。
封書から察するに、招待状のようにも見える。封を開けて中身を取り出すと、やはり招待状であった。
「何もこの時期に……」
どうやらローレムバ国の王弟でありイングラム国との国境のザフロス辺境伯が結婚をしたため、お披露目会を行うという招待状であった。
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