あなたの子ですよ ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~【短編版】
ウリヤナがクロヴィスの婚約者となり、王城を訪れる機会が増えてからは、コリーンと会っておしゃべりをする場を設けることも可能となった。
彼女もまた、王城で侍女として務めていた。コリーンは、以前と変わらぬ屈託のない笑顔で、ウリヤナを励ましてくれたのだ。
高貴なる生まれの子女は、王城務めを通して縁を作る。将来の伴侶を探すための務めといっても過言ではない。
ウリヤナの友人でもあるコリーンの名をなぜ彼が呼ぶのか。
「待ちくたびれましたわぁ、クロヴィス殿下」
隣の控えの間と続く扉から姿を現したのは、やはりウリヤナも知っているコリーンであった。だが、それはウリヤナの友人である彼女とはどことなく雰囲気が違う。
いつもの彼女は、派手な装いを好まずどこか控えめなドレスを着ていた。それでも身に着けた教養は身体の中から滲み出ているような清楚な女性だったのだ。
だが、目の前にいるコリーンは深紅のドレスを身に纏い、艶やかな唇にも真っ赤な口紅が引かれている。赤みのかかった茶色の髪は大きくうねって背中に流れていた。
妖艶な美女と表現すれば聞こえはいいが、どことなく娼婦を思わせるような雰囲気を醸し出している。
彼女は躊躇いもせずにクロヴィスの隣に座った。ふわっと、香水の強いにおいがウリヤナの鼻をかすめた。
「ウリヤナ。私は彼女と婚約をするつもりだ」
優しい笑みを浮かべたクロヴィスの視線の先には、勝ち誇った笑みを浮かべているコリーンがいる。
「左様、ですか……」
そう呟いたウリヤナの声はかすれていた。
彼女もまた、王城で侍女として務めていた。コリーンは、以前と変わらぬ屈託のない笑顔で、ウリヤナを励ましてくれたのだ。
高貴なる生まれの子女は、王城務めを通して縁を作る。将来の伴侶を探すための務めといっても過言ではない。
ウリヤナの友人でもあるコリーンの名をなぜ彼が呼ぶのか。
「待ちくたびれましたわぁ、クロヴィス殿下」
隣の控えの間と続く扉から姿を現したのは、やはりウリヤナも知っているコリーンであった。だが、それはウリヤナの友人である彼女とはどことなく雰囲気が違う。
いつもの彼女は、派手な装いを好まずどこか控えめなドレスを着ていた。それでも身に着けた教養は身体の中から滲み出ているような清楚な女性だったのだ。
だが、目の前にいるコリーンは深紅のドレスを身に纏い、艶やかな唇にも真っ赤な口紅が引かれている。赤みのかかった茶色の髪は大きくうねって背中に流れていた。
妖艶な美女と表現すれば聞こえはいいが、どことなく娼婦を思わせるような雰囲気を醸し出している。
彼女は躊躇いもせずにクロヴィスの隣に座った。ふわっと、香水の強いにおいがウリヤナの鼻をかすめた。
「ウリヤナ。私は彼女と婚約をするつもりだ」
優しい笑みを浮かべたクロヴィスの視線の先には、勝ち誇った笑みを浮かべているコリーンがいる。
「左様、ですか……」
そう呟いたウリヤナの声はかすれていた。