卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
引退試合が近づいてくる。
先生と過ごす1分1秒が、凄く大切に感じる。
合宿での肝試しでは、先生が極度の怖がりだと知り、花火では、無邪気な先生を知った。
このまま時間が止まればいいのに。
そんな気持ちで胸がいっぱいになる。

俺の想いとは関係なく、月日は流れ、とうとう引退試合の日を迎えた。
相手は、優勝候補で全国レベル。
試合前、ベンチで皆が萎縮して、無言になっていた。
キャプテンの俺がしっかりしないと。
「なぁ、俺ら3年間、頑張って来たよな。悔いのないように、自分の今までの練習の全てをぶつけようぜ。なっ!俺らの団結力は、どこにも負けないだろ?」
「そうだな!やりきろうぜ!」
「おぉーっ!!」
皆の顔に笑顔が戻り、新庄先生を見ると、もう涙を流していた。
「先生、泣くの早すぎねぇ?」
皆笑いだし、緊張が取れてリラックス出来た。
「じゃあ、行こうぜ!」
スタメンとして、俺はコートの中央に立ち、天井を見上げて深呼吸した。
「お願いします!」
試合開始の合図が響く。
絶対勝つ!と気合い十分の俺達だけど、相手は強豪校。
弄ぶようにボールを回され、シュートを打つチャンスなんて全く無い。
こぼれたボールを拾っても、すぐにカットされ、奪われてしまう。
試合は、4Qになって、たったの6点。
それも相手のファールで取った点数だけだった。
残り時間は2分。
あと2分で、俺達の3年間が終わる。
その時、最後のタイムアウトが掛かった。
立ち上がった川センは、
「お前ら、格好いいぞ!あと2分間だ。悔いの無いよう、必死で走れ」
その言葉だけ言うと、椅子に座った。
皆、疲れて、椅子に座って項垂れている。
暑さと手が届かないボールに振り回されて、正直あと2分、必死で走れるかも分からない。
「なぁ、もし、ボール持ったら、俺に回してくれ」
もう、俺が走るしかなかった。
ベンチの端の方で、胸の前で指を組み合わせ祈っている、新庄先生を見つけた。
俺は先生の前に行き、先生の手を握り締めながら、
「先生のパワーくれよ」
< 3 / 78 >

この作品をシェア

pagetop