卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
大介が腕を握る。
「耀!」
それを最後に、電話を切られた。
「落ち着いて。俺の話を聞いて欲しいんだ」
「止めて、離して」
私は手を振り切って、部屋の端に逃げた。
「奈菜、あんなに愛し合ったの、忘れたの?」
「もう、あなたとの思い出は、私の身体には無いわ」
「もう1度、俺のこと、考えて欲しいだけなんだ。なぁ、頼むよ。ゆっくり話しようよ」
じりじりと距離を縮めて来る。
私は机に追い立てられ、咄嗟にそこにあったボールペンを握った。
「それ以上近づかないで!」
私はボールペンの先を自分の方に向けた。
「奈菜・・・・あんなに愛し合った俺を、それほど嫌なのか」
「私が愛されたいのは、1人だけよ!それに、あなたの愛は、偽物だったと分かったわ」
大介しか知らなかった私。
昨日、耀の愛で、本当に愛し合うことの幸せと、女としての悦びを、初めて知った。
その時、ドアを激しく叩く音がした。
大介がドアの音にびっくりした隙に、私は慌てて、ドアを開けると、そこに耀が立っていた。
「耀!」
私は耀の胸の中に飛び込み、抱きついた。
「奈菜、怖かったよな」
耀は私を強く抱きしめ、頭を撫でてくれた。
「お前か?奈菜が好きな相手は」
「あぁ、そうだ。奈菜を奪いたいなら、俺に正々堂々と挑めよ」
大介は、力が抜けたように、壁にもたれかかった。
「・・・ふっ、もういいよ。奈菜、お前の心の中に、俺への気持ちは少しも無いんだな。自分を傷つけようとしてまでも・・・よく分かったよ」
その後、ホテルの人が駆けつけて、警察沙汰になりかけたけど、耀が上手く言ってくれて、事は収まった。
「次は容赦しない。もう2度と俺達の前に現れないと約束しろよ」
「あぁ。もう奈菜の前には現れないよ」
大介は最後にそう言って、部屋のドアを閉めた。

ホテルを出て、車に乗ると、急にさっきの恐怖感が体を襲い、無意識に体が震える。
「奈菜、まだ怖いの?」
「もう大丈夫だって分かってるのに、勝手に体が・・・」
「俺がいるから」
「仕事中なのにごめんね。迷惑かけちゃって…助けに来てくれてありがとう」
私は涙が溢れ出た。
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