卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
その言葉に顔を上げて、俺を見つめる瞳は潤んでいた。
「先生、見ててよ。絶対ゴール決めるから」
先生は、微笑みながら頷いた。
俺は先生に力を貰って、コートに向かった。
笛が鳴り、試合が始まる。
やっぱり、ボールを回され、俺達の手に触ることができない。
スコアボードに表示された残り時間は、あと10秒。
その時、油断したのか、相手のパスが緩くなって、近くにいたチームメートが、ボールをカットした。
「耀っ!頼んだぞ!」
大きな声で叫びながら投げたボールは、3ポイントライン前に弧を描きながら飛んできた。
俺はキャッチして、迷わずリングに向かってボールを放った。
あれだけ煩かった歓声が聞こえない。
ボールが弧を描き、ゴールに向かっていく時、スローモーションのようだった。
そして、吸い込まれるように、ボールはリングの中をすり抜けた。
ワァーッ!!!
今日1番の歓声が沸き上がり、体育館に響き渡る。
それと同時に、試合終了を知らせるブザーが鳴った。
「耀!やったぜ!」
「ありがとう!耀!」
俺達は惨敗した。
でも、コートの中央に集まった俺達は、まるで勝者のように喜んでいた。
ベンチを見ると、皆泣いていて、新庄先生はタオルで顔を覆って泣いていた。
「ありがとうございましたっ!」
とうとう終わったんだ・・・
俺達の3年間は、これで幕を閉じた。

ベンチに戻り、片付けていると、
「北見くん、格好良かったよ」
真っ赤になった目を涙で潤ませながら、新庄先生が傍に来た。
「ありがとう、先生。先生にパワー貰ったおかげだから」
「北見くん、頑張ってたから、神様からのご褒美だね」
「じゃあ、先生は女神様だな」
俺がからかうと、先生が顔を赤くして、
「もー、大人をからかってないで、早く行くよ」
本当に先生のお陰だから。
そう思いながら、駆け足で先生を追いかけた。
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