卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
引退すると、昨日までの日々が嘘みたいに、直ぐに受験勉強に入る。
先生は、教室に来ても、直ぐに女子達に囲まれていた。
時々数学を教えてるみたいだけど、俺は受けることが無かった。
授業が終わってから、1人で居残って勉強している時、先生が教室をのぞきに来て、
「どぉ?勉強進んでる?」
そう声を掛けてくれた。
「英語、教えて欲しいところがあるんだ。得意なんでしょ?」
「北見くんの方が出来るでしょ」
そう言いながら、前の席に座って、俺と向かい合った。
「あぁ、ここかぁ、ここはね・・・」
2人きりの教室。先生との距離が近くなる。
前に垂れるサイドの髪を、耳に掛ける先生の仕草に、胸がドキドキする。
気持ちを抑えることが精一杯だった。
「ありがとう。もう行っていいよ」
「うん、また体育館に息抜きに来てね。待ってるから」
手を振って教室を出て行く先生に、俺は胸がぎゅっと締め付けられた。
先生に俺の気持ちを伝えたら、どんな顔するんだろう。
先生の事が好きなんだって。
でも、自分の気持ちを伝えることが出来ず、時は過ぎていった。

「今日、練習試合するって言ってたなぁ。見に行ってみるか」
ある日、居残って勉強してたけど、途中で引き上げて体育館に向かった。
先生居るかなぁ・・・
先生の事を考えながら、歩いていると、体育館の入り口にある水道で、顔を洗っている女子がいた。
「キャッ!」
目を瞑ってたせいか、蛇口が手で塞がれて、その子の顔と髪の毛に水がかかった。
「大丈夫かよ」
俺が近づこうとすると、首に掛けていたタオルで顔を拭いて、こっちを向いたのは新庄先生だった。
束ねた髪を外し、おろした髪が濡れている。
眼鏡をしていない先生。
小さな顔に二重のくっきりした大きな目、そして小さくふっくらとした可愛い口元。
その姿に、俺の鼓動は跳ね上がった。
「先生・・・」
眼鏡を掛けた先生がこっちを向いた。
「あっ、北見くんだ」
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