卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
「お陰様で、軌道に乗りましたので、私は現役を退きました。会社は弟夫婦に任せて、その息子が経理を担当するので、私は引き継ぎとサポート役として、少しのんびりと暮らそうと思ってます」
「そうでしたか、それは良かったです。では、隣のお住まいには、いつから」
「3月の半ばまでには、住めるようにする予定です。妻には先立たれてまして、息子と2人で住む予定ですので、また近々ご挨拶に伺います」
そのあと耀は、高山さんの前の会社の様子を聞いていた。

しばらく2人は話をして、高山さんが美和に問いかけた。
「ところで、ここは子供達が勉強できるスペースがあるとか・・・」
美和が戸惑った顔で、
「そうなんです。自習室なんですけど、こちらの奈菜が分からない所があれば、教えるっていう環境なんです」
「へぇー、それは素敵ですね。新庄さんは、指導されたご経験が有るんですか?」
「はい、短い期間でしたが、以前、高校の教師をしておりまして」
「それは奇遇ですね。実は私も、会社を継ぐまでは高校の教師をしてましてね。55歳の時、父が病気になって、会社を引き継ぐために辞めたんですよ。実は、息子も高校教師を去年辞めて、今は塾の講師をしています」
「そうなんですか!お話、聞かせていただけますか?」
それから、高山さんは、教師だったころの話を沢山してくれた。
美和と私がずっと高山さんの話を聞き入っている間、耀はずっと何かを考えている様だった。
「あのぉ、お話中すみません。高山さん、今でも子供達を教えることって出来ますか?」
「あぁ、実は息子の知り合いで、小さな塾を開いているところがありましてね。週に3回だけど、教えに行ってます。中学生ですけどね。あぁ、息子は高校の進学コースだから、色々教えて貰えるから、そこは助かってるかな」
「ご自宅で塾を開業することに興味はないですか?」
「塾、ですか?」
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