卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
「ゴホンッ!社長、俺達部下がいる前で、イチャつくの、止めてもらえます?」
「まぁ、見慣れてよ、小田さん」
「はぁ?お前、いい加減にしろよ!俺のせいにしたり、惚気たり!」
小田さんは、ヘッドロック状態で、耀を捕まえていた。
そして耀は、子供みたいに無邪気に笑っている。
「いつもこんな感じなの。どっちが上司なのか分からないでしょ」
「だから、いつも楽しそうに仕事してるんですね。家でも会社や仕事の愚痴を聞いたことありませんから」
「奈菜さんも、いつでも事務所に顔を出してくださいね。待ってますから」
「はい、宜しくお願いします」
私は、3人の暖かい空気に包まれて、ようやく迷っていた気持ちが吹っ切れた。

その日の夜、ソファでくつろいでいた時、私の思いを耀に伝えようと、まずは大河さん達の話から始めた。
「耀、大河さんも小田さんも素敵な人達だね」
「あぁ、俺を支えてくれたからね。2人が居なかったら、俺は社長になれていない。きっと、奈菜にも出逢えなかったと思う。あとの社員も皆、同じような資質で、情熱的だよ。あの2人が面接官だし、合わない人は自然に辞めていくんだ」
「そう、耀は幸せだね」
「ほんと、私生活では奈菜と一緒だし、仕事仲間もあんな感じだからね。本当に頑張った甲斐があるよ」
「ねぇ、今すぐじゃないんだけどさ・・・」
「うん」
「仕事でも、耀の力になれたらいいなって思ってるんだけど、ダメかなぁ・・・」
「ほんとに?手伝ってくれるの?」
「うん、他の人達みたいには出来ないけど、資料作ったりは出来ると思うんだ。数字は苦手じゃないし」
「奈菜」
耀は私を抱きしめた。
「ほら、教室も高山さんに任せたしね」
「ありがとう。そんな風に考えてくれてるだけでも嬉しいよ」
私から体を離して、
「じゃあ、まずは在宅スタッフとして契約しようか。そうしたら、俺の仕事を手伝いながらだし、出来なければ俺がやればいいし」
「耀に負担、掛からない?」
「俺が奈菜のことで、負担に思うことなんて、これからもずっとあり得ないから。奈菜が出来ないことや、困ったことは俺が担うよ。だから、俺が困った時は助けてよ」
「うん、ありがとう」
耀の力になりたい。
それが叶う1歩を踏み出せて、私は凄く嬉しい。
「あっ、そうだ。今度の土曜日、川センのところに行かない?付き合ってること報告に行こうよ。俺、連絡しとくからさ」
「でも、あんな辞め方してるし・・・」
「そんな事気にしなくていいよ」
「うん」
私は、川田先生に会うことにためらいがあったけど、本当はとても会いたかった。
耀のお陰で、過去の自分にも区切りがつけられる。
新しい自分の道を進む決心をした。
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