卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
「でも美和、また来ていい?」
「もちろんだよ。いつでも来て」
「じゃあ、俺達はこれで失礼します。奈菜、行こうか」
「うん、また来るね」
私と耀はお店をあとにして、移転した耀の事務所に向かった。

「あっ、お姉さんだ」
ビルの下で、耀のお姉さんが誰かを待っているようだった。
「あらっ、奈菜ちゃーん」
お姉さんが私に抱きつこうとすると、耀が私を後ろに隠した。
「抱きつくなって言ってるだろ!俺のだって、何度言わせるんだ」
「私の妹でもあるのよ!」
お姉さんが拗ねて、顔を横に向けた。
私は耀の後ろから、お姉さんに声を掛けた。
「お出かけですか?」
「そうなの。今からお昼に行こうと待ち合わせしてて。あっ!来た来た!」
そこに来たのは、西沢さんだった。
「耀くん、それに奈菜さんも」
「こんにちは、所長」
耀は、外では西沢さんの事を所長と呼んでいる。
「そうだ耀くん。あとで話があるんだ。事務所に来てくれるかな」
「今日は午後から空いてますから、あとで行きますね」
「あぁ、宜しく。じゃあ、今から京子と食事に行ってくるよ。結婚記念日なんだけど、今日は忙しくて、夜は遅くなりそうだから、お昼にお祝いなんだ」
お姉さんは西沢さんの横で、少し照れた顔で俯いていた。
仕事から離れて、西沢さんの隣にいるお姉さんは、とてもしおらしくなって、可愛い。
「そうですか。ごゆっくり」
「じゃあね、奈菜ちゃん。次合う時は、耀がいない時にね」
「は、はい」
「抱きつくなよ」
お姉さんは、ふんっ!と言って横を向き、西沢さんの腕につかまり、歩いて行った。
「高山先生といい、姉貴といい、奈菜を1人に出来ないな」
「私は耀より年上の大人なんだから、心配いらないよ」
耀は、目を細めて、私をじっと見下ろしてきた。
「どの口が言ってるの?今すぐ俺の口で塞ごうか?」
私は、慌てて両手で口を塞いで、
「いえ、いいです」
と言うと、
「分かったなら宜しい」
そう言って、私の頭を撫でて、手を繋いで中に連れていった。
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