卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
こ、怖い。穏やかな大河さんに淡々と質問攻めされたら・・・
考えるだけで身震いした。

「あっ、奈菜ちゃん、いいところに来た。頼みたいことあるんだ。皆、手いっぱいで、俺が声掛けると『忙しいのでご自分でどうぞ』って言うんだよ。冷たいだろ?」
そう言って、事務所を見渡すと、皆、ほくそ笑んで、無視していた。
「ほら、酷いだろ」
「私も、お願いしたい事があって。今日はまだあと、3人面接があるので、お手伝いしてもらっていいですか?」
「はい、私に出来る事なら」
「あのさ、俺の嫁、こき使ってない?」
「あいにく、ここでの奈菜さんは私達の仲間ですから」
大河さんの言葉に、耀は言い返す事が出来なかった。
「そうだぞ、耀。俺の奈菜ちゃんでもあるんだ」
「小田さん、何度も言いますが、いいですか。指1本でも、」
「はいはい、社長はほっといて、奈菜ちゃんこっち来て」
小田さんが私の背中を押しながら、連れて行こうとすると、
「だから、触るなって!」
「はぁ?これくらいいいだろ。お前はいつでも出来るだろ」
「俺以外に触らせたくないんだよ!」
「うるさいっ!仕事中です!」
大河さんの喝で、いつも収まるこの騒ぎに、他の社員の人は、慣れた様子で笑いながら仕事している。
こんな雰囲気だけど・・・
いざ、真剣な話し合いになり、言葉が飛び交うと、ピリッとした空気の中、無駄のない会話と行動。
そして、役職関係なく、意見を言い合う雰囲気の良さ。
耀も小田さんも、緊張感を与えず、皆の意見を引き出すのが上手い。
先生の頃では感じられない、ワクワク感に惹かれる。

私は、喫茶店の店員、先生として過ごした時間に終止符を打った。
これからは、耀の事務所で、キャリアを積みたい。
そして、耀のことを公私共に支えられる妻になりたい。
その気持ちで溢れていた。
耀のお陰で、私は成長出来た。
人を愛すること、愛されることの幸せを。
自分自身がまだまだ成長出来ることの楽しさも。
妻として、大切な耀を支える喜びも。
耀は全てを私に与えてくれた。

そして、最愛なる耀と私は、結婚式の日を迎える。
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