卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
【忘れたい過去】
「おはよう、美和」
「あっ、奈菜、おはよう」
私、新庄 奈菜(しんじょう なな)は32歳で独身。
大学を卒業してから、直ぐに高校の教師として勤め、25歳まで数学を教えていた。
小さい頃から先生になりたくて、高校の時、実習に来ていた女子大生の先生と過ごす日々が楽しくて、得意な数学の教師になった。
そんな夢を実現させた教師を、25歳だった私は、ある事情で辞めることになった。

恋愛に疎かった私は、大学4年のクリスマス、友達の彼氏に3つ年上の大介を紹介された。
付き合う前、すごく優しかった大介・・・
社会人の大介は、凄く大人に感じて、頼りがいがある。
そして、大介と付き合う事になった。
恋愛経験の無い私の初めての人・・・
当時、教師になりたての私。
先生として、しっかりしないと。
そんな緊張していた私を、年上の大介は慰めてくれた。
このままずっと、大介と歩むものだと信じていたのに・・・

付き合ってからしばらくすると、大介は急に変わった。
証券会社で勤める大介は、仕事が忙しいからと、電話を掛けても繋がらず、大介の連絡を待つばかり。
月に2回ほど、週末に私の家に遊びに来ても、約束や仕事があるからと帰ってしまい、寂しい思いをしていた。
それでも、一緒にいる時は優しくて、それまでの寂しさを忘れてしまう。
「ねぇ、今度大介の家に行っていい?」
いつも私の家ばかりで、大介の家に行きたいと思って言ったら、
「あのさ、恥ずかしくて言えなかったけど、実は俺、友達の家に居候しててさ。ほらっ、この間、友達のショットバーに行ったろ?あいつの家だから、その・・・奈菜を愛せないからさ」
そう言って、私を抱き寄せた。
「ここに来てもいいんだよ」
「ここからは職場が遠いからね。ありがとう。居候してる間に、お金を貯めて将来に備えないと」
恋愛慣れしていない私は、頭を撫でてそう言う大介の言葉を、少しも疑うことなどしなかった。
「なるべく早く友達の家出るから、それまで待ってて」
「うん・・・分かった。じゃあ、それまで大介が遊びに来てね。いつでもいいから」
「うん、ごめんね。仕事が忙しくてなかなか会えなくて。でもいつも奈菜の事、考えてるから。大好きだよ」
大介は、私を抱きしめて、2人は愛を確かめ合う。
「ねぇ大介。明日休みだから、どこか出掛ける?」
「あぁ、ごめん。そのつもりだったけど、明日、取引先の偉い方と接待でね。朝早いんだ。今夜は、その準備をしたいから、帰るね」
そう言って、キスをし、
「じゃあ、また連絡するから」
愛し合ったあとは、余韻を味わうことなく、すぐに服を着て、帰る事が多くなってきた。
でも、友達の家を出たら、私が家に行けば、ずっと傍にいることが出来るんだ。
そう思って我慢していた。
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