過去の名君は仮初の王に暴かれる
最後の灯
「午後の会議に、間に合うといいけれど……」
ロレシオの忘れ物を届けようと、国王の部屋に続く廊下を早足で歩いていたエルゼは、ふととある異変に気づいた。
(あら、王妃の部屋のドアが開いているわ……)
国王の部屋の隣にある王妃の部屋の重厚な扉が、今日に限って少しだけ開いている。これまでは、固く閉ざされていたのに。
そっと近づいてみると、部屋の中から足音がした。どうやら、誰かが部屋にいるらしい。
いつものエルゼなら、見て見ぬふりができただろう。覗き見をするのははしたない行為だ。しかし、今日だけは魔が差してしまった。
『あの部屋は大事な人の部屋なんだ』
先ほどロレシオに言われた言葉が脳裏に浮かぶ。
(少しだけなら、大丈夫よね。こっそり見るだけよ。陛下の大事な人が、どんな方なのか、わたくしだって知っておきたいもの……)
細く開いたドアの隙間から、息を殺してエルゼは王妃の部屋を覗く。
ロレシオの忘れ物を届けようと、国王の部屋に続く廊下を早足で歩いていたエルゼは、ふととある異変に気づいた。
(あら、王妃の部屋のドアが開いているわ……)
国王の部屋の隣にある王妃の部屋の重厚な扉が、今日に限って少しだけ開いている。これまでは、固く閉ざされていたのに。
そっと近づいてみると、部屋の中から足音がした。どうやら、誰かが部屋にいるらしい。
いつものエルゼなら、見て見ぬふりができただろう。覗き見をするのははしたない行為だ。しかし、今日だけは魔が差してしまった。
『あの部屋は大事な人の部屋なんだ』
先ほどロレシオに言われた言葉が脳裏に浮かぶ。
(少しだけなら、大丈夫よね。こっそり見るだけよ。陛下の大事な人が、どんな方なのか、わたくしだって知っておきたいもの……)
細く開いたドアの隙間から、息を殺してエルゼは王妃の部屋を覗く。