過去の名君は仮初の王に暴かれる
まず見えたのは、ロレシオの後ろ姿。そして次に彼女の眼に飛び込んできたのは、あまりに懐かしい光景だった。
深緑色を基調とした、カーテンやカーペット。王家の紋章の入った美しいタペストリー。重厚なつくりの椅子と机。天蓋付きの、こじんまりとしたベッド。壁一面の埃っぽい本棚――……
(そんな、そんなはずはないわ……)
エルゼは息を飲む。
何度瞬きを繰り返しても、王妃の部屋は、イヴァンカ・クラウンが生きた時のままだった。あの陰鬱な日々に、突然戻ってきてしまったのではないかという錯覚に陥るほどに。
「うそ……」
驚きのあまり、エルゼは手に持っていた書類や本を落としてしまう。慌てて拾ったものの、もう遅い。ものが落ちた音に反応したロレシオがこっちを向いた。
「――ッ!? エルゼ!?」
「ご、ごめんなさい。本をお忘れになっていたので、届けに参ったのですが……」
「どうしたんだ! 顔色が悪いじゃないか」
「……陛下、入室を許可していただけませんか?」
「構わないが、本当に大丈夫なのか?」
心配するロレシオの横を通り過ぎ、エルゼはふらふらと王妃の部屋に入る。
深緑色を基調とした、カーテンやカーペット。王家の紋章の入った美しいタペストリー。重厚なつくりの椅子と机。天蓋付きの、こじんまりとしたベッド。壁一面の埃っぽい本棚――……
(そんな、そんなはずはないわ……)
エルゼは息を飲む。
何度瞬きを繰り返しても、王妃の部屋は、イヴァンカ・クラウンが生きた時のままだった。あの陰鬱な日々に、突然戻ってきてしまったのではないかという錯覚に陥るほどに。
「うそ……」
驚きのあまり、エルゼは手に持っていた書類や本を落としてしまう。慌てて拾ったものの、もう遅い。ものが落ちた音に反応したロレシオがこっちを向いた。
「――ッ!? エルゼ!?」
「ご、ごめんなさい。本をお忘れになっていたので、届けに参ったのですが……」
「どうしたんだ! 顔色が悪いじゃないか」
「……陛下、入室を許可していただけませんか?」
「構わないが、本当に大丈夫なのか?」
心配するロレシオの横を通り過ぎ、エルゼはふらふらと王妃の部屋に入る。