過去の名君は仮初の王に暴かれる
「……だから、私が王妃の部屋に移りたいと言ったのを却下されたのですね」
「その通りだ。この部屋は、このままでなくてはならない」
「どうして、イヴァンカ・クラウンの部屋を残すのです……。イヴァンカは、この国の財政すら傾けた毒婦と言われているではないですか」
そこまで言って、エルゼは自身の身体の芯が急に冷えた気がした。すっかり忘れていたが、ロレシオは腐敗した前王政を憎み、反乱を起こした人物だ。当然、イヴァンカ・クラウンもまた、彼の憎むべき敵のはずだ。
なぜなら、イヴァンカ・クラウンは凋落したサントロ王国の最たる象徴だったと、歴史は語っている。真実とは大きくかけ離れていても。
エルゼは唇を噛んだ。
「陛下はイヴァンカの悪行を後世に伝えるために、この部屋を遺したのですね。それほどまでに、クラウン王朝へ恨みを……」
そこまで言った時、エルゼの華奢な肩をロレシオが掴んで真正面からエルゼを見つめた。
「それは違う!」
ロレシオの青灰色の瞳に、熱い影がよぎる。
「その通りだ。この部屋は、このままでなくてはならない」
「どうして、イヴァンカ・クラウンの部屋を残すのです……。イヴァンカは、この国の財政すら傾けた毒婦と言われているではないですか」
そこまで言って、エルゼは自身の身体の芯が急に冷えた気がした。すっかり忘れていたが、ロレシオは腐敗した前王政を憎み、反乱を起こした人物だ。当然、イヴァンカ・クラウンもまた、彼の憎むべき敵のはずだ。
なぜなら、イヴァンカ・クラウンは凋落したサントロ王国の最たる象徴だったと、歴史は語っている。真実とは大きくかけ離れていても。
エルゼは唇を噛んだ。
「陛下はイヴァンカの悪行を後世に伝えるために、この部屋を遺したのですね。それほどまでに、クラウン王朝へ恨みを……」
そこまで言った時、エルゼの華奢な肩をロレシオが掴んで真正面からエルゼを見つめた。
「それは違う!」
ロレシオの青灰色の瞳に、熱い影がよぎる。