過去の名君は仮初の王に暴かれる
急な告白に、ロレシオは動揺して息を飲んだ。エルゼの涙を拭いていた指が、不自然に硬直する。
「……どういうことだ?」
「イヴァンカ・クラウンとして28年間生きた記憶がわたくしにはあるのです。前世の忌まわしい記憶を封印して、エルゼ・ラグベニューとして静かに生きるつもりだったのですが、……皮肉なことに、どういうわけかこの城に帰ってきてしまいました」
「……なぜ、そんな大切なことをずっと秘密にしておいた?」
「わたくしの前世がイヴァンカ・クラウンだと知られてしまえば、謂れのない謗りをうけたでしょうから……。だから、ずっと秘密にしていたのです」
「事情はよく分かった。しかし、すぐに信じろと言われても……」
「やはり、そうですよね」
エルゼは部屋を横切って年季の入った書類机の前に立つ。かつてイヴァンカが愛用していた懐かしい机は、万年筆やインクポットの位置までそのままだ。
エルゼは腕に抱いていた書類と本を机の上に置くと、おもむろに引き出しに手をかける。
「……わたくしの前世がイヴァンカ・クラウンだったという証拠に、わたくしは引き出しの中身を全て覚えていますわ。右上の引き出しは、封蝋と予備のインク。左上の引き出しには、便箋や眼鏡が入っていたはずです。そして、右下の引き出しには、お母様の形見のネックレスがあったはずです」
エルゼは次々と引き出しの中身を当てていく。
「……どういうことだ?」
「イヴァンカ・クラウンとして28年間生きた記憶がわたくしにはあるのです。前世の忌まわしい記憶を封印して、エルゼ・ラグベニューとして静かに生きるつもりだったのですが、……皮肉なことに、どういうわけかこの城に帰ってきてしまいました」
「……なぜ、そんな大切なことをずっと秘密にしておいた?」
「わたくしの前世がイヴァンカ・クラウンだと知られてしまえば、謂れのない謗りをうけたでしょうから……。だから、ずっと秘密にしていたのです」
「事情はよく分かった。しかし、すぐに信じろと言われても……」
「やはり、そうですよね」
エルゼは部屋を横切って年季の入った書類机の前に立つ。かつてイヴァンカが愛用していた懐かしい机は、万年筆やインクポットの位置までそのままだ。
エルゼは腕に抱いていた書類と本を机の上に置くと、おもむろに引き出しに手をかける。
「……わたくしの前世がイヴァンカ・クラウンだったという証拠に、わたくしは引き出しの中身を全て覚えていますわ。右上の引き出しは、封蝋と予備のインク。左上の引き出しには、便箋や眼鏡が入っていたはずです。そして、右下の引き出しには、お母様の形見のネックレスがあったはずです」
エルゼは次々と引き出しの中身を当てていく。