過去の名君は仮初の王に暴かれる
 もともと、ロレシオは男爵家の三男に産まれた男であり、玉座とは程遠い家系であった。もしこのサントロ王国が安泰であったならば、彼は一人の騎士として一生を終えたに違いない。
 しかし、サントロ王国はロレシオが物心ついたころから、すでに崩壊しかかっていた。人々は飢餓と重税に苦しむなか、貴族たちは堂々と違法な商売に明け暮れ、宰相たちはその違法な商売を見逃す代わりに、賄賂を受け取る。もちろん、国庫は火の車である。
 人々は疲弊し、無気力になっていた。

 そんな衰退する国で、ロレシオは、第二の首都ガレスで蜂起した。腐敗する王政に反旗を翻したのだ。
 人々は流星のごとく現れた救国の騎士に熱狂し、忠誠を誓った。革命の騎士は3年をかけて戦いに勝利し、ついに国王マンフレートとその一派を一掃したのである。

 国民たちからの熱狂的な支持を得て、ロレシオは国王の座についた。
 
 国王となったロレシオは善政を布き、よく国を治めた。
 腐敗した政治は全て一新され、古の悪法は改正された。また、平民たちにも教育の門戸を開き、帝国中に学校を普及させたのも彼だった。
 だからこそ、彼の経歴は血なまぐさいものであっても、決して唾棄されるべきものではない。輝かしい変革の前には、決まって薄暗い歴史が付いてくるもの。
 きれいごとで全て片付けられないことくらい、エルゼはわかっている。
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